<フィギュアスケート:世界選手権>◇最終日◇16日◇カナダ・オンタリオ州ロンドン

 浅田真央(22=中京大)が3大会ぶりに表彰台に上がった。ショートプログラム(SP)6位から、フリーは07年大会以来6年ぶりに自己ベストを更新する134・37点で、合計196・47点で3位。冒頭の大技2発はミスしたが、全体的な向上を確信する演技をみせた。2年ぶり出場の金妍児(韓国)が218・31点の圧勝で復活優勝。ライバルの存在も糧に、さらなる成長を誓った。村上佳菜子(18)が4位となり、日本勢はソチ五輪の出場枠「3」を確保した。

 最終盤、白鳥が銀盤の上をはためくように小刻みにステップを踏み、回りながら考えていた。「やっと今シーズンの大きな大会が終わるな。最初のアクセルの失敗はあったけど、最後は本当に気持ち良く自分の力を出せたな」。勢いよくフィニッシュに流れ込み、うなずくこと3度。充実感が浅田の体を駆け巡った。

 ミスより挑戦が価値だった。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は認定はされたものの「足を引くことがちょっと薄れていたのかな」と両足着氷気味。完璧ではなかったが、SPとフリーで3回転半が認定されたのは10年バンクーバー五輪以来だ。

 続く連続3回転は1発目に回りすぎて、2発目がつけられずに終わったが「感触はよかった」。後ろ向きになる要素は1つもない。「練習も含めて充実していたので、悔しい気持ちはあるんですけど、自分がやってきたことはできた」。やってきたこと-。ジャンプでは軸を“細く”することだった。長年の肉体酷使でO脚が進行したことが、10-11年からの2季の不振の要因の1つだった。どうしてもジャンプの時に内股があく。軸が広がって“太く”なり、回転力が落ちた。

 トレーナーと取り組んできたのは太もも内側の筋肉の強化。「脱O脚」で内股をピタリと閉じて、軸を細くすることを目指した。成果は今季花開いた。世界選手権までの6大会の計87回のジャンプで転倒なし。転ばないシーズンは06-07年以来6季ぶりだった。確実に安定感は増した。手応えが大きいからこそ、ライバルへの言葉も滑らかだ。

 浅田

 (金妍児が)復帰してきて、また切磋琢磨(せっさたくま)して、強いライバルがいるところでやっていることは、もちろん悔しい思いをすることもあると思いますが、また成長できるんじゃないかな。

 合計で約20点差をつけられたが「今の時点では自分がミスをしている状態なので、ミスしない演技をして、どれくらい試合で争っていけるかを試していきたい」と次を見据える。そして、さらりと「ミスがあったので得点はそんなに伸びなかったですし…」。伸びない得点で6年ぶりにフリーの自己ベストを塗り替える成長ぶり。稼げる要素はまだまだある。金を捉える伸びしろは残している。

 11年、12年ともに6位。奈落の底からはい上がっての3年ぶりの表彰台だ。さらなる高みには復活したライバルが立ったが、いま感じることは1つ。「確実にメダルという形まできたのは、これまで登ってきてよかったな」。【阿部健吾】