柔道の男子90キロ級の小野卓志(30=了徳寺学園職)が、エースを継承する。世界選手権は9日、東京・代々木第1体育館で開幕する。6日、都内で公開された最終調整で、小野は約1年ぶりに五輪金メダリストの井上康生コーチと白熱した乱取りを行い、万全の仕上がりをアピールした。男子代表は昨年の世界選手権で、世界大会で史上初めて金メダルゼロの惨敗を喫した。日本男子柔道の危機を国際大会5連勝中の小野が救う。
小野は畳の上で、かつて日本男子柔道界をけん引した男と対峙(たいじ)した。00年シドニー五輪100キロ級金メダリストの井上コーチとの乱取りは、昨年のオランダでの世界選手権直前以来、約1年ぶりだった。他の代表選手が軽めの調整で終わる中、激しい組み手争いから、鋭い投げ技、足技を応酬した。2人の荒々しい息遣いが、道場に響いた。
小野
オランダのリベンジで「やりましょう」と言った。1年前はボコボコに投げられた。でも今日はやってやりましたよ(笑い)。アニキに勝ててよかった。
長らくエースを務めた井上コーチが北京五輪の選考に敗れて引退してから約2年。もちろん全盛期の力はない。それでも井上コーチ自身「現役復帰?
思いがよみがえらないと言ったらウソになる。今でも練習で海外選手を投げると『いける』と錯覚する」と言うほど、一定の力をキープしている。小野にとっては、1階級上で五輪と世界選手権を計4度制した井上コーチとの好勝負は「今の自分の状態が分かる」とバロメーターになった。
エースの座を受け継ぐ準備はできている。08年北京五輪は81キロ級で初戦敗退。だが減量苦を機に転向した90キロ級で飛躍した。昨年の世界選手権は3回戦敗退も、昨年12月のグランドスラム東京から国際大会5連勝。世界ランク1位に上りつめた。鈴木桂治と並んで代表最年長タイの30歳だが、篠原監督から「スター候補」と指名を受けた。
小野の状態を肌で確認した井上コーチは「やるべきことはやっているし、状態はいい」と太鼓判を押した。本番ではコーチボックスに入り二人三脚で臨む。男子代表は昨年の世界選手権で、世界大会で史上初めて金メダルゼロの惨敗に終わった。「康生さんは本当に熱い」と最高のサポートを受ける小野が、日本男子柔道に最強の看板を取り戻す。【広重竜太郎】


