横綱朝青龍の暴行問題で揺れる日本相撲協会の武蔵川理事長(61=元横綱三重ノ海)が、責任回避と受け取られかねない発言を行った。30日、東京・両国国技館で、朝青龍への処分について「選挙が終わって(新)役員が決まってからの話なので。私だって(選挙に)受かるかどうか分からないんだから」と、言葉を濁した。

 この日、高砂親方から口頭で、朝青龍と、暴行を受けたとされる知人男性の示談が成立したとの報告を受けた。しかし、詳細については「聞いていない」。高砂親方にその場で詳細な報告を求めることも、国技館内にいた朝青龍への事情聴取も行わなかった。

 前日29日には川端達夫文科相が「協会が国技の責任を踏まえ、適切に対処してほしい」と発言し、横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長は、協会の対応の遅さに業を煮やした形で、わざわざ両国国技館に自ら足を運んだ。理事選が2月1日に控えているとはいえ、少しでも事態の収拾を急ぐべきなのに、同理事長は後ろ向きな姿勢に終始した。

 協会トップの対応が後手に回る中、現役力士からは朝青龍に対して厳しい意見が出た。横綱白鵬(24)は「本当なら、はっきり言ってよくない。(相撲界に)入ったころ、先輩から手は刀になるから人を殴ってはいけないと教えられた」。同理事長の弟子でもある平幕の雅山(32)は「あってはならないこと。僕が決めるわけじゃないけど、これまでとは訳が違う。若いころ、僕らが負けているから(横綱に)上がっちゃった人。残念」と話した。

 元幕内皇司の断髪式が行われた土俵を下りた武蔵川理事長は、西の花道奥で控えていた朝青龍とすれ違った。朝青龍は頭を下げるようなこともせず、顔をそむけ、武蔵川理事長も目を合わせようとはしなかった。協会トップだけの責任ではないが、これまでの協会の甘すぎる対応があらためて浮き彫りになるようなシーンだった。【山田大介】