<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇24日◇愛知県体育館

 年6場所制となった1958年(昭33)以降、史上初めて3人の関脇が2ケタ白星に到達した。琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)は豊真将(30)を破って殊勲賞を受賞し、稀勢の里(25=鳴戸)は全勝優勝を狙った大関日馬富士(27)に土をつけた。鶴竜(25=井筒)も阿覧(27)を下し、この日は3人そろって白星。3人の関脇が同時に2ケタ白星を挙げるのは、55年9月の秋場所以来56年ぶりの快挙となった。秋場所(9月11日初日、両国国技館)以降は、大関とりを狙う3人の激しいバトルから目が離せなくなる。

 今場所初の大入りとなった会場を沸かせたのは、関脇の3人だった。結び前には稀勢の里が、すでに優勝を決めていた日馬富士を撃破。初の全勝優勝を狙っていた難敵に、終始攻勢で最後は突き落とした。大台の10勝目を挙げ「やっぱり、そう簡単には勝たせてくれなかった。最後は必死だった。来場所のために頑張ろうと思っていた」と、鼻息荒く振り返った。先場所は8勝に終わったが、再び大関とりの起点をつくった。

 稀勢の里を奮い立たせたのは、先に勝っていた琴奨菊と鶴竜の存在だった。琴奨菊は前日14日目に若の里に4敗目を喫し、今場所後の大関昇進は消滅。だが敢闘賞を獲得した元気な豊真将を相手に、得意の左四つで危なげなく寄り切った。「守りじゃ勝てない。心と体すべて充実しないと勝てない」と、緊張から硬くなって敗れた、前日から吹っ切れていた。鶴竜も阿覧を左四つから寄り切る完勝。他2人の関脇には「負けたくない気持ちはある」。

 琴奨菊の11勝を筆頭に、稀勢の里と鶴竜がともに10勝を挙げた。3人の関脇が10勝以上したのは、55年秋場所で4人中3人が到達して以来、56年ぶり。15日制では過去に4度あるが、年6場所制となって以降では史上初の快挙だ。大関とりは三役での3場所合計33勝以上が目安とされる。これで先場所からの合計が琴奨菊は21勝、鶴竜は22勝となり、秋場所は大関とりに挑戦する。稀勢の里も今場所を起点に、11月の九州場所後の昇進は可能性十分だ。

 3人の出世争いは、そのまま大相撲の盛り上がりに直結する。それだけに放駒理事長(元大関魁傑)は「関脇が元気だと相撲が面白いといわれている通り。いい競争相手になるんじゃないかな」と、大いに期待する。白鵬に勝ちながら、昇進を逃した琴奨菊も「自分らが盛り上げるようにしたい。この経験を生かしたい」ときっぱり。横綱白鵬1人勝ちの時代から、確実に変わり始めている。【高田文太】