<大相撲秋場所>◇10日目◇20日◇東京・両国国技館

 大関琴奨菊に完敗の関脇稀勢の里(25=鳴戸)は、花道を戻る途中に小さく首をひねった。風呂場に入ると「あー、くそっ!」と、外にまで聞こえる大声を上げた。上がり座敷に座ると、両手をパチンと合わせて悔しそうにうつむいた。質問には答えず、口を真横に結んだまま無言で立ち去った。奇跡の大関とりに望みをつなげず完敗。優勝争いから大きく後退し、今場所での昇進は難しくなった。

 突き押しがさえて初日から8連勝。前日9日目の把瑠都戦は、四つに組んで初黒星を喫した。連敗が許されないこの日の取組前、師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)は言っていた。「ひじが曲がってもいいという覚悟で、突き押しで攻めたら面白いけどな」。ところが中途半端に組んで完敗。相手の相撲にまんまとはまってしまった。2ケタ勝利なら来場所も大関とりがかかる。集中を切らさず、残り5日間を大事にしたい。