<大相撲夏場所>◇14日目◇19日◇東京・両国国技館

 西前頭7枚目の旭天鵬(37=友綱)が大関琴欧洲(29)を破り、3敗をキープ。千秋楽を残しトップタイに踏みとどまった。37歳での初優勝となれば、貴闘力の32歳5カ月を抜いて最年長記録となる。大関稀勢の里(25)、東前頭4枚目の栃煌山(25)も3敗をキープ。横綱白鵬(27)を含む4敗の3人も勝ち、星1つの差に6人がひしめく大混戦のまま千秋楽を迎える。

 旭天鵬が無我夢中で琴欧洲を振り回した。「気付いたら投げていた」。胸を合わせるとすかさず左上手をつかむ。37歳のベテランは動きを止めることなく、一気に勝負を決めに行った。「相手はでかいから頭をつけようと思った。あそこで止まっていたら負けるパターンだった」と振り返った。

 6日目から9連勝で11勝目。3敗でトップタイを走る。複数の平幕力士が首位に立って千秋楽を迎えるのは、1972年初場所以来40年ぶり。V戦線を引っ張る1人だが「あと2人いるから。そういう意味では楽だよね」と緊張感の中にも、過剰な意識はない。

 92年モンゴルから来日し、05年に日本国籍を取得した。4月に定年となった師匠大島親方の本名・太田武雄の名字をもらい、太田勝が本名。場内放送では「モンゴル・ウランバートル出身」と呼ばれる日本人。優勝なら06年初場所の栃東以来の日本人Vでもあり、モンゴル出身力士としては50度目のVという旭天鵬ならではの現象が起こる。

 前夜は長女柚希ちゃん(3)、長男蓮くん(9カ月)と床についた。だが眠れずに「映画を3本見た。アルマゲドン、ゴールドハンター、もう1本は忘れたけど」。眠れたのは午前4時近かった。ただし不足した睡眠は、昼寝で補えた。恵子夫人が気を利かせ、午前11時ごろから午後2時すぎまで、子供を連れて外出した。これで相撲に集中できた。

 今年4月から長女が保育園から幼稚園に通い始め、下校時間が早くなった。今場所序盤には家族が、国技館まで迎えに来てくれた。「娘に『負けちゃったね』って言われてさ。でもそういう話をしてくれるだけでも、リフレッシュになるよね」と笑みをこぼす。

 千秋楽、国技館に家族を呼ぶ予定はない。「緊張しちゃうよ。また眠れなくなる」と首を振る。通算801勝は歴代10位。幕内出場1184回は歴代7位。37歳8カ月での優勝は昭和以降で最年長。初土俵から所要121場所も、貴闘力の103場所を大幅に更新する。「ぶつかっていくしかない」。37歳の鉄人が大一番へ挑む。【高橋悟史】