<大相撲初場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館

 関脇逸ノ城(21=湊)が入門後初めて、負け越しのピンチに立たされた。前頭筆頭栃ノ心(27)に内無双で敗れ、横綱日馬富士戦を残しながら7敗目。場所前は2桁勝利を宣言していたが、勝ち越しへ1敗もできなくなった。

 カクンと折れた逸ノ城の左膝が、土俵についた。栃ノ心とのがっぷり四つから、投げの応戦。右下手投げに耐え、得意の左上手投げが空振りすると、前まわしを引かれると同時に右膝をはたかれた。幕内では昨年初場所の白鵬-琴奨菊戦以来の決まり手で、初の負け越しが迫る瀬戸際。想定できなかったかと問われると「そうですね。失敗しました」とうなだれた。

 力勝負を想定していた。十両時代から3度の対戦で、決まり手はいずれも寄り切り。「力が強いですね」と警戒し、朝稽古では入念に組み方を確認した。「(相手が)頭をつけて、上手を切ったときに(前に)出ればよかった」と悔やむ一方で、勝機を逃さなかったのは栃ノ心。幕内経験の差が、明暗を分けた。

 新三役の先場所は、帯状疱疹(ほうしん)の影響を残しながら勝ち越した。今場所は順調に調整し、掲げた目標は2桁勝利。だが立ち合いで右を差せず「逸ノ城スペシャル」もいまだ不発。快進撃を支えた相撲が取れず、迷いが生じている。北の湖理事長(元横綱)からは「相手が攻め方を変えている上に、自分の相撲が取れていない。立ち合いの鋭さを身につけないと」と厳しく指摘された。

 昨年末に体重202キロを計測し、減量を誓った。前日の夕食もご飯は茶わん1杯。好きなギョーザも3個だけと意識する。すべては鋭い立ち合いを身につけるためだ。だが減量はまだ実感できず「ちょっと、動けなかった」。相手が研究する速度に対応するため、心技体に課題が残っている。

 12日目は結びの一番で日馬富士と対戦。苦戦を強いられ経験を積んでいるが、その成果はまだ見せていない。あっけなく負け越すのか、意地を見せるのか。「考えることはない。思い切りやるだけ」。怪物の真価が問われる。【桑原亮】