競り勝った中で、特に目を引いたのが梅野だ。2本の長打だけでなく、この日は走塁と守備で素晴らしかった。5回無死満塁で糸原の左翼への飛球は浅かったが、ライン際で広島西川もギリギリの体勢で捕球している。三塁コーチの指示もあっただろうが、本人もスタートを切るつもりだったと思う。アウトになれば、2死となり、無得点に終わる可能性もあった。そうなれば、試合の流れを失っていただろう。積極的な走塁が光った。

8回2死一、三塁の守備でも、好調の上本が真っすぐにタイミングの合ったスイングを見せていた。湯浅もそれを感じていたようで、3球目のストレートを力んで引っかけたが、こともなげに捕球していた。さらに次の球も、フォークを要求し、ワンバン投球をしっかりと止めた。これが梅野の捕球技術の高さだ。特にワンバンを捕球する技術は、セ・リーグでNO・1だ。接戦の展開で勝利に導いたのは、梅野の走攻守の働きが大きかった。

この日は完投能力の高い伊藤将に5回で代打を送った。チャンスはそう多くない。早めにマルテを起用するなど、前日13日にいやな負け方をしていただけに、短期決戦ならではの采配だった。残り8試合も、このようなベンチを含めた総力戦になる。その中で、勝った中で反省点はある。7回の攻撃だ。無死一塁で、打者近本が初球、見逃せばボールの高めの投球をバントし、打ち上げた。一塁走者の植田は戻れずにアウト。この場面では、ダブルプレーが一番ダメだ。仮にバントに失敗しても、一塁に残れば、盗塁もできるし、得点の可能性は残る。走者は冷静に対応すべきで、無理にバントをしにいった近本も反省しないといけない。確実に進塁させるベンチの作戦を実行しなければならなかった。流れを相手に渡す凡プレーはあってはならない。短期決戦はミスをしたほうが負ける。(日刊スポーツ評論家)

阪神対広島 8回表広島2死一、三塁、湯浅(右)は上本を空振り三振に仕留め梅野と喜ぶ(撮影・上山淳一)
阪神対広島 8回表広島2死一、三塁、湯浅(右)は上本を空振り三振に仕留め梅野と喜ぶ(撮影・上山淳一)