全チームが開幕して2試合目を迎えた。長いペナントレースを考えれば、たったの2試合で「良い」「悪い」は言い切れない部分がある。それでも技術的な部分で言うなら「これはすぐには直らないだろう」という悪い癖があれば「悪い」という判断は下しやすい。難しいのは「良い」という判断。結果が出ても「これが続くのか?」という判断は、予想しにくいからだ。

前置きが長くなったが、開幕2試合の中田の打撃には目を見張るものがあった。前日の試合では内角高めの難しい直球をホームラン。これまで内角の速い球には体が回らす、バットのヘッドが返ってしまう悪癖があったが、軸回転で打てていた。その他の打席でも外角球を強引に引っ張るようなスタイルではなく、コースや球種に合わせたフォームで打てていた。

「たまたまではない」と確信できたのが、今試合だった。初回1死満塁での第1打席、やや甘めの外角ストレートをセンター前へはじき返した。そして6回1死からは真ん中付近の甘い真っすぐを左中間スタンドに放り込んだ。タイムリーは初球だし、ホームランにしたカウントは1ボールから。狙い球を絞って強引なスイングをしがちな中田だが、来た球に対して素直にバットが出ていた。

昨年の後半から中田の変化を感じていた。強引になるとどうしても外側からバットが出ていたが、バットを内側から出そうという意識を感じるスイングに変わっていた。それでも昨年はまだ、内角の速い球に対しては体の回転が止まってインパクトでバットのヘッドが返ってしまっていたが、今季は明らかに違う。ボールの内側をたたくという強い意識を感じる。

調子が悪くなれば悪い癖が出るときもあるだろう。しかし、正しいバッティング理論を理解していれば不調は長く続かない。ベテランになると、なかなか大きく打撃フォームは変えられないものだが、それが可能なのは頭でしっかりと認識しているから。もともとパワーは一級品。今季は打率も本塁打も、かなりの数字を残せると思う。

開幕2試合で巨人が挙げた得点は、すべて中田が挙げた(5打点)。もともと岡本和、丸の状態は悪くないし、5番の中田がこの状態なら、前を打つ打者の調子も上がってくる。他チームにとっては、厄介な打線になりそうだ。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 今季初勝利で巨人中田翔(手前)は、場内1周でスタンドにボールを投げ入れる(撮影・浅見桂子)
巨人対中日 今季初勝利で巨人中田翔(手前)は、場内1周でスタンドにボールを投げ入れる(撮影・浅見桂子)