ソフトバンク森は失点した1回、3回はピンチで右打者に、ことごとく打たれた。約1カ月ぶりの登板で、立ち上がりは力んだのだろう。真っすぐが制御できていなかった。2回からは落ち着いたが、3回に再び右打者につかまった点に、先発に転向した森のテーマが出たと感じた。昨季までは右打者も抑えていたが、これで今季は右打者には3割8分1厘。1割6分7厘の左打者との差は大きい。

もともと、右打者には外中心に攻めるタイプ。抑えの頃は、たとえ外を狙われても、速いボールで凡打やファウルが取れていた。だが、先発に転向し長いイニングを投げるとなれば、全球全力というわけにはいかない。その分、コンビネーションが大事になる。

その際、カギになるのがインコースの使い方だ。森の真っすぐはカット気味のため、左打者には食い込む軌道が邪魔になる。ただ、右打者に対しては食い込む軌道がない。ツーシームもあるが、インコースにはあまり使っていない。この日はDeNAの右打者4人に計30球を投げ、インコースの真っすぐ、ツーシームは5球だけ。使い方も効果的とは思えなかった。

象徴的だったのが、3回2死三塁での桑原への攻めだ。カウント2-2から5球目にインハイ139キロを投げファウル。続く6球目で外低めにカーブを投げたが、左前に運ばれ、5点目を失い降板した。対角線を使って攻めてはいるが、打者が嫌がっているようには見えなかった。おそらく5球目のあと、桑原の頭には「次は外」という読みがあっただろう。インコースを攻めても打者に印象づけられていない。状況に応じたインコース攻めが必要で、念には念を入れ、もう1球、内に続けても良かった。

今の森は、スピードボールで抑えてきた「かつての自分」と「これからの自分」がせめぎ合っているように映る。力でねじ伏せてきたピッチャーが、もっともぶつかる壁と言ってもいい。かつての投球スタイルにとらわれすぎず、今の自分のボールでどう抑えるか。最近では松坂大輔がベテランになるにつれ、球を動かし、真っすぐに強弱を付け、投球スタイルを変えていった。スムーズにチェンジできれば長生きできる。ソフトバンクは大関が離脱し先発陣が盤石とは言い切れないだけに、チーム再浮上のためにも、森の今後が重要となる。(日刊スポーツ評論家)