パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)争いが大混戦だ。試合前時点で2位で並んでいたソフトバンクと楽天の直接対決第1ラウンドは、ソフトバンクが6-0で楽天に快勝。試合前まで0・5ゲーム差で4位だったロッテは、西武を7-3で下した。
これにより、順位は単独2位にソフトバンク、0・5差の3位でロッテ、ソフトバンクに1ゲーム差で楽天が4位と変動した。
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ソフトバンク、ロッテ、楽天が最後まで競り合う展開は変わらない。最後に物を言うのは、細かいところに至るまで、チームとしてどこまでしっかり徹底できるか。その1点に尽きる。
初回ソフトバンクはヒットの周東を川瀬が送り1死二塁。柳田の左前にポトリと落ちるヒットが先制タイムリーとなる。快足周東ならば生還するのはたやすいと思われる方もいるだろうが、実は打球が左翼岡島の前で弾む少し前に、ハーフウエー付近の周東はスタートを切っている。
打球の軌道と守備位置から判断したスタートは、足の速さと匹敵するくらいの武器。WBCでも準決勝メキシコ戦で、村上の打球に反応し、前を走る大谷を追い抜かんばかりの勢いでサヨナラのホームに滑り込んだ。
この先制点にフォーカスすると周東の判断が非常に大きい。さらに、この間に柳田はきっちり二塁に進塁。逆に言えば、間に合わないホームへ投げた楽天守備陣の判断力に疑問符がつく。なぜホームに? と感じる。ここは柳田の二塁進塁をケアする中継が必須だった。
もう残り試合はわずかだ。楽天も集中して試合に入ったはずだ。にもかかわらず、こうした記録に表れないミスに近いプレーになるのは、焦りからだ。視野を広く、この局面での優先順位を確認していれば、きっちり防げたはずだ。そこに、CS争いで重圧に苦しむチームの現状がある。
楽天はおよそ2週間ぶりの先発大関の前に6回途中までほぼ策も見えなかった。セーフティーの構えで揺さぶることもなく、ベンチも動かず、何事もなく抑えられてしまった。
守備面でも目立ったのはソフトバンク。楽天は2回1死満塁で炭谷のセカンドへのハーフライナーに、三森が冷静に対処。意図的にワンバウンド捕球しての併殺打。1回裏の攻撃、2回表の守備に、ソフトバンクの高い判断力が感じられた。
2回無死二塁では、その三森が犠打を失敗しながら、最後は外角球に無理やりバットをかぶせるようにして二ゴロ。進塁打で1死三塁とし、続く甲斐の遊ゴロで3点目を奪った。
最後まで細部を確実にやり抜いたチームが勝つ。どのチームにもまだ可能性がある限り、この試合のような展開はあり得る。その場、その場で最善の判断ができるように、備えるしかない。(日刊スポーツ評論家)