阪神にとっては、高橋の投球に尽きる巨人戦の完封勝利だった。ストレートを中心に、巨人打線を寄せ付けなかった。その姿は「前の高橋」に戻ったかのように映った。
昨年7月15日の中日戦で左肩、ヒジ故障から275日ぶりの復帰登板をネット裏から見た。故障前のふところに飛び込むクロスファイアは影を潜め、変化球を駆使してまとめていた。
わたしは当時、その投球に「コンビネーションに生きる術を求めるのか、再び真っすぐに磨きをかけるのか、どちらに進むべき道を定めるのか、今後に注目したい」と論じている。
年が変わって、開幕2戦目に先発した高橋は、実に素晴らしいストレートを投げ込んだ。それは球速150キロには満たない。だが素晴らしいと評したのは、俗にいう“生きた球”を投げていたからだ。
投手は150キロを超えて速さだけで抑え込めるものではない。回転数の高い、いわゆるスピンのかかったストレートは、打者の手元で威力を発揮した。カウントを整えるのも、困ったときもその球で攻めた。
女房役の伏見も、ストレート勝負に手応えを得ていたはずだ。阪神バッテリーは巨人サイドのストレート狙いを読むと、そこは変化球でかわすといった余裕さえ見えた。
今の日本球界は多彩な変化球が全盛で、リリーフには存在しても、先発ピッチャーにストレートで真っ向から勝負ができるタイプは限られている。高橋はその数少ないうちの1人に復活したといえるだろう。
(日刊スポーツ評論家)




