オリックス担当を少し離れ、臨時ソフトバンク担当として日本シリーズを取材している。そこで第2戦の試合前、柳田に聞いてみた。例えば無死一塁の打席。広く空いている一、二塁間へ打つ意識はあるのか。「まったくそんなこと考えたことないッス。全部ホームラン狙い」。気持ちいいの答えだが、それと裏腹な状況判断が7回に見えた。

 2点を追う1死三塁。初球は砂田のスライダーを打ち損じた。「ホームランを狙った。甘い球をファウルしてしまった。もうあんな球は来ない。とりあえず1点を取ろうと」。DeNAの一塁手、二塁手は定位置やや後ろ。中堅から右のゴロなら確実に1点が入る。頭を切り替えた2球目は外角球を強引に引っ掛け、高いバウンドで二遊間を抜いた。繊細な技術と執念が詰まった適時打に思えた。

 第1戦でも無死一塁から長谷川が中堅右に2ラン。「右方向に打って最低でも進塁させようと思い、打席に入った」と振り返った。プロなら誰もが考えることだが、ソフトバンクの打者は頭で描くイメージを高い確率で実行できているように見える。派手さの中に光るつなぎの意識、そして具現化する能力。3年前まで担当だった時にも思ったが、やっぱり強い。【オリックス担当 大池和幸】