今年も、高校球児たちの熱い夏が始まっている。

 100回目の節目となる甲子園。球児たちにとって、3年間の高校野球生活の集大成の場でもある。

 だが、かつて聖地を沸かせた日本ハム松本剛にとっては、少し意味合いが違った。当時を振り返ってもらったときのこと。印象的な言葉が心に残った。「プロに行くための勝負の場だと思って、3年間過ごしていました。何としても結果を残して、高卒でプロ野球選手になるんだという思い。3年の夏に甲子園に行かないと、スカウトに見てもらえない。死にもの狂いでやってましたね」。真剣な表情だった。

 帝京は東京の強豪校。「ひたすら同じ日々を送ってました。本当に野球だけしてたなという感じ」。同じ時間に起き、同じ時間に帰ってくるという野球漬けの生活。名将前田監督の下で、厳しい練習をこなしていた。年末年始以外は休みもなし。毎日、白球を追ったが、苦しい日々を乗り越えられたのは、その先のプロ野球をしっかりと見据えていたからなのかもしれない。

 3年時の11年夏。松本は努力を結実させ、1年夏、2年春に続き甲子園の土を踏んだ。主将で4番遊撃手。チームの要として出場。1回戦では大谷翔平(現エンゼルス)擁する花巻東高戦で、後のチームメートから決勝の適時打を放ち、その年のドラフト会議で日本ハムから2位指名を受けた。

 夢見たプロ野球の世界では、まだレギュラーをつかみきれずにいる。今季は1軍出場31試合(24日現在)で、2軍と行ったり来たりを繰り返している。それでも松本は「勝ちにこだわる、1試合に懸ける思いというのは、プロに入ってからも変わらない」と、いまも“あのとき”と同じように、先の目標へ向かって努力を続けている。あの夏経験した、聖地での輝き。今後の松本の活躍に期待したい。【日本ハム担当 山崎純一】