最近、ある日本ハムのコーチがボソリと言っていた。「時間だけは、行ったり来たりできないんだよね」。ペナントレースも最終盤に差し掛かった。パ・リーグは西武、ソフトバンク、そして私の担当する日本ハムの三つどもえの接戦。この原稿を書いている15日時点では、まだどこが優勝するかは分からない。未来に何が起きるか、知りたくても知り得ない。もどかしい。刻々と訪れる目の前の今が積み重なった過去から、未来を予測するしかない。

9月6日未明に北海道を襲った地震だって、その時にならないと現実としては目の前に現れなかった。北海道全域が停電となった「ブラックアウト」なんて、まさに一寸先は闇。何が起きるか分からない未来のために、今できることは何なのか。過去に戻ることはできないが、過去から得た教訓を生かして前に進むしかないのだろう。道民の1人として、痛切に感じた。

プロ野球も同じ時間軸の中で進んでいく。未来に起きることを過去の経験から予測して、勝負の時までに備える。

日本ハムは若い芽を伸ばしながら、1人1人の旬を逃さず、勝負の秋を見据えて無理使いもしない緻密な選手起用で着実に白星を積み上げてきた。ラストスパートへの余力ともう一つ、北海道を背負う使命を再確認したこともプラスに転じるはずだ。勝負どころは迫る。今こそ、長い時間をかけて備えてきた力を見せる時だ。【日本ハム担当 木下大輔】