“素”のバレンティンに、日本人を感じた。
シーズンが終わり、渡米する前日。いつものキラキラした「CB」(ココ・バレンティンの略)のピアスも、金とダイヤがつながった大きなネックレスも、重そうで頑丈な時計もしていない姿で、ヤクルトのクラブハウスを訪れた。水色のタンクトップ、ハーフパンツ、足元はサンダルのいでたち。車ではなく徒歩でやってきた。「ハロー」とエントランスに現れた顔は、見慣れたウラディミール・バレンティンではないように感じた。何も飾らず、まるでシーズン中はまとっているよろいを脱いだかのような雰囲気。ちょっとお疲れ気味の表情で、そのまなざしは優しかった。これが、本当のバレンティンの姿なのかもしれないと思った。
力強くて、豪快。戦闘態勢の時はそんなイメージが強いが、実は繊細な部分もあった。シーズン序盤、たまたま練習中に雑談をした試合で、本塁打を放った。すると次の日から、わざわざ声をかけてくれるようになった。「昨日、試合前に話したらホームランを打ったからね!」。フリー打撃から、フルスイングでスタンドに放り込むダイナミックさの一方で、「ゲンを担ぐ」日本人のような部分もあった。
今季、1度だけ「サダハル・オー・スタイル」と言って、米国から買ってきたというソックスをはいた試合があった。本塁打が出なかったため1試合のみの着用で終わってしまったが、現役時代の王貞治氏をほうふつとさせるスタイルだった。そしてくしくも、自身が更新する前のシーズン最多本塁打記録保持者、その王氏が球団会長を務めるソフトバンクへ移籍することになった。
今年6月には、第2子の長男カイルくんが誕生。「僕に似てる。かわいいでしょ」と何度も写真を見せてくれた。「将来は、息子がヤクルトの4番で、僕が監督」と話したことも、コメントとして残しておきたい。
渡米前に荷物整理のためクラブハウスを訪れたのは、ほんの数分だった。居合わせたスタッフに別れのあいさつをして、写真撮影にも応じていた。
また徒歩で、クラブハウスを出ていった。「See you」とあいさつすると、振り返って、笑顔で手を振ってくれた。あの少し丸みを帯びていて、大きな背中が、忘れられない。【保坂恭子】




