9年ぶりに野球の取材現場で俳句に触れた。今季のロッテ初取材だった4月9日。プロ3年目の山口航輝外野手(20)が、西武戦でプロ初本塁打をマークし、メモリアルな一句を詠んだ。「春の夜 夢にまで見た 初アーチ」。チームが逆転負けを喫し、お立ち台での披露は逃したが、そのチャンスは今季2度目のロッテ取材で巡ってきた。

20日の日本ハム戦。同点の8回に球界を代表するセットアッパーの宮西から決勝アーチを放った。試合後のお立ち台。ファンが注目する中、この一戦で始球式を務めたお笑いコンビ「ぺこぱ」にかけ、一句詠んだ。「時の人 ぺこぱに力 もらったよ」。試合で逆方向への1発で沸かせた男は、“1発芸”でもファンを笑顔にさせた。

9年前の12年に「時を戻そう」。西武にドラフト2位で入団した小石博孝も「俳句左腕」で球界に名を残した。山口と同様、鶴崎工時代に伊藤園主催「お~いお茶 新俳句大賞」に国語の授業の一環で応募。各都道府県で5人選出される「都道府県賞」を受賞した。現在、巨人で打撃投手を務める小石は初勝利を挙げたお立ち台で一句詠んだ。

「初志貫徹 負けぬという気持ちで 初勝利」

当時、チームメートだった上本(達之、現西武2軍打撃コーチ)から「字が余りすぎ」と突っ込まれ、体を小さくしながら、苦笑いだった姿が印象的だった。19年限りで小石が現役を引退し、消滅したかに見えた「球界の俳人」。途切れることなく、19年に入団した山口が継承し、小石の名も再び脚光を浴びた。【久保賢吾】