「ローマは1日にして成らず」。大きなことを成し遂げるために、長年の努力なしには成し遂げることができないことを表すことわざとして、代表的な言葉だ。“努力”とは簡単に言うが、生みの苦しみは当事者にしか分からないものがある。

楽天石井一久GM兼監督(48)は指揮官を兼務して今季が1年目。優勝もCS圏外の可能性も残した16日の西武戦前に、終盤戦の戦いぶりを振り返った。

「今は本当に苦しいところだと思います。別に昨日おととい負けたからではなく、1つでも上に行こうという気持ちでやっている中で、競り合っていることは苦しいこと。僕もベンチで見ているだけでも苦しいことがあるので、プレーしている選手はもっと苦しいと思う。でも苦しい中でプレーしていることは成長や財産になると思うので、いいことだなと思います」

4年目の山崎剛が9月上旬からスタメンに定着。5年目の村林、3年目の辰己、太田、2年目の小深田、投手なら7年目の安楽、5年目の西口ら未来を担う若手がひりひりとした緊張感の中でプレーし、一瞬一瞬を貴重な経験としている。もちろん、目の前の勝利を求めて戦う。その中で1軍、しかも上位争いを繰り広げるグラウンドでしか味わえない時間を決して無駄にはしない。

指揮官は、求める打線の粘りについて「10月に入って、非常にアプローチが1つ良くなった。苦しい中でも、自分たちの間合いに持って来ようという意識がすごく強いし、できている。結果が全てというところもありますけど、内容も常にレベルの高いところで作っていければ、結果も出やすくなる。そこの努力はできていると思います」と手応えを示していた。楽な道を選んだ方がすぐに結果は出るかもしれないが、指揮官が掲げる骨太のチームを作り上げには、苦しみを経て得た経験が不可欠。楽天は今まさに“常勝軍団は1日にして成らず”を地で行っている。【楽天担当=桑原幹久】