広島のリリーバー松本竜也投手(22)は“リスクマネジメント能力”にたけている。ここまで栗林良吏の37試合に次いでチームで2番目に多い36試合に登板し、1勝2敗で防御率は4・20。一時は2軍落ちもしたが、接戦でも使える選手として首脳陣は重宝している。


■技量向上のため高校卒業後社会人へ

智弁学園(奈良)3年春にセンバツに出場している。2回戦で敗れたが、当時エースだった右腕は2試合を1人で投げ抜いた。プロ注目の存在ながら、その後は“リスク回避”で社会人に進んだ。「高校時代にプロ志望届を出す選択肢もあった。ただ当時は良くても下位指名だったと思う。中途半端な能力でプロに行っても結果が出るか分からない。それなら、社会人でプレーしてからプロを目指しても遅くないと思う」と判断。卒業後はホンダ鈴鹿に進んだ。時期は遅れても、活躍という地位を得るため、遠回りを選んだ。


■ホンダ鈴鹿では工場内の安全管理業務

社会人時代は「社内の工場の安全を守るために(機械操作の)マニュアルとかを作っていた。野球があったので、ケガをしたらいけない。なので、直接的に作業する部署ではなく、そういった安全管理をする部署に所属していました」。工場勤務の職員たちに危険がないように、配慮を巡らせた。

午前中に業務に当たり、午後は野球の練習を行う。「パソコン? 苦手です。マジでわけわかんなかったです」と笑って振り返る。「僕らは社内で野球をやらせてもらっている立場」。感謝を胸に、苦手のデスクワークも全うした。

4年間務めたホンダ鈴鹿の“安全管理”。インターネットで「退職届」の書き方を調べ、21年末に提出した。今季は赤い作業着を身にまとい、広島の試合終盤を支えている。【広島担当 前山慎治】