車窓から見つめる景色には、悲願の連覇しか映らなかった。悔しさを胸に、オリックス福田周平外野手(30)は9月9日、新神戸駅から高知・安芸まで4時間超、列車に揺られた。

「やる気スイッチを、もう1回入れ直すため。(8日に)札幌から伊丹に飛んで家に帰った。次の日、新神戸から岡山、高知まで特急南風号に乗って…。瀬戸大橋を通って、山の奥まで入っていった。絶景でしたよ、行き帰り」

シーズン真っただ中で、福田は修業の旅路を選んだ。再調整-。7日の日本ハム戦(札幌ドーム)の試合後、中嶋監督と話し合った。9月に入り20打数1安打の打率0割5分で、修正が必要だった。「打ててなかったのと、走塁ミスもあったりで。監督は『いったん落ち着いてほしい』と。呼ばれた段階で(登録)抹消だと思った。しっかり話ができたから、うまく切り替えられた」。10日から高知・安芸で阪神戦に臨む2軍に合流。伊丹~高知はプロペラ機による移動だったが「閉所恐怖症かもしれない」と福田は陸路を選択。1人で列車に揺られた。

「自然豊かで海も見えて、いい環境でした。(宿泊は)オーシャンビューで、ご飯もおいしかった」

こんがり日焼けして帰ってきたリードオフマンは「熱中症になるんじゃないか? ってぐらい暑かったですけどね。いい調整ができた」と笑って振り返る。

「最短10日間で上がれる確証はなかった。ただ、計算すると(再昇格後)残り8試合しかなかった。だから、戦う準備をファームでするしかない」

課題、修正点をノートに書き出し、2軍戦で取り組んだ。鍛錬を積み、最短の18日ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)で再昇格。1番センターで起用され「集中して食らいつけた」と3回に決勝打。宮城とお立ち台に上がった。「まだもっとしびれる場面が絶対に来ると思う。気持ちの準備をしたい」。グッと握りしめた往復切符に、福田の執念が宿っていた。【オリックス担当=真柴健】