今季、中日から日本ハムに加入したアリエル・マルティネス捕手(27)の活躍をアシストする、陽気な“パートナー”がいる。同じく今季、新加入の高橋佳佑通訳(25)だ。

ヒーローインタビューでは「1対1ではなく、1人別の人(通訳)を挟むとテンポやリズムが悪くなってしまうので」と、マルティネスのスペイン語を日本語に訳す際、やや強めに抑揚をつけ、感情豊かに伝えている。

「言葉がわからない分、選手が喜んでいるかどうかが、より強く伝わるように。いいことを言っているときは、より良く伝わるように。逆に話している人が怒っていたら、単調な感じで言うのは違うかなと。感情に合わせられるようにしている」。02年日韓W杯でサッカー日本代表のトルシエ監督を、激情的な通訳で支えたフローラン・ダバディー氏を思い出したが、高橋通訳は当時まだ3歳。当然、ダバディー氏の存在を知らず「自分で、そうした方がいいかなと考えてやっています」。選手を思い、自主的に取り組む“新時代のダバディー”と、いうところだろうか。

気配り上手な相棒の存在にマルティネス自身も「自分より感情豊かに伝えてくれる。選手が喜んでいることをファンが分かってくれると、自分も気分がいいです」と感謝している。

高橋通訳は14日、25歳の誕生日を迎えた。中学まで野球をやっており、高校時代はニュージーランドへ1年留学した。「海外の人と直接、話せる仕事がしたい」と関東の外語大に進学した。「陽気な文化に興味があった」とスペイン語を学び、在学中にはメキシコ留学。現地の企業で働きながらスペイン語をマスターした。大学卒業後はロッテの通訳を務め、今季からは日本ハムで、マルティネスや、アルカンタラ、ハンソンらスペイン語圏の選手の通訳として、奔走している。

若い通訳の奮闘ぶりを見ていて、外国人選手と直接会話できると、きっと楽しいだろうなと、ふと思った。簡単な英単語レベルなら理解できるが、スペイン語は、さっぱり分からない。サッカー担当の頃、ブラジル人選手を取材する機会があった。そこで唯一覚えたのがポルトガル語の「ありがとう」=「オブリガード」。その記憶もあり、調子に乗って取材後のマルティネスに「オブリガード」と言って、恥をかいたこともあった。

スペイン語では「グラシアス」だった。

そんな失態もあり、理解は出来ていないが最近、できるだけマルティネス本人の言葉に、耳を傾けるよう、心がけている。スペイン語の響きだけでも覚えれば、少しずつ距離が縮まるかもしれないと。

すると何度も繰り返す単語があることに気付いた。それは「ムーチョ」。ムーチョと言えば「カラムーチョ」「すっぱムーチョ」、そしてハスキーボイスがすてきな桂銀淑のヒット曲「ベサメムーチョ」だ。

気になって調べてみると「ムーチョ」は英語の「much」や「a lot of」にあたることばで「もっと」や「たくさん」「いっぱい」という意味があるらしい。「カラムーチョ」を製造販売する湖池屋お客さまセンターに届いている「カラムーチョの“ムーチョ”ってどんな意味ですか?」という質問への回答文によると、「辛いものをもっと」の意味合いがあり、「すっぱムーチョ」は同様に「すっぱいものをもっと」ということになる。

ちなみに「ベサメムーチョ」は、「ベサ」が「キスして」で、「メ」が「私に」の意味で「たくさん私にキスをして」または「もっと私にキスをして」となる。桂銀淑のシングルがリリースされた当時(95年)は、てっきり桂銀淑の母国、韓国語だと思っていた。

話はそれたが、マルティネスは「とても」「たくさん」「いっぱい」「もっと」というフレーズを、コメントによく挟んでいるということになる。

これはムーチョ(たくさん)勉強になった。

13日の楽天戦では来日6年目で初の2ケタ10号を放ち、捕手としても来日最多となる20試合以上で先発マスクをかぶるなど、今や攻守で欠かせない戦力になっている。是非これからもムーチョ、ムーチョ活躍してもらい、新庄ハムをムーチョ、勝たせてくれたら。

そして記者も、取材の幅を広げるため、スペイン語をムーチョ覚えられるよう、努力したい。【日本ハム担当 永野高輔】

02年W杯日韓大会でのトルシエ監督とダバディー通訳
02年W杯日韓大会でのトルシエ監督とダバディー通訳