令和初の王者に輝くのはどちらか。第101回全国高校野球選手権大会決勝(22日午後2時)は、星稜のスーパーエース奥川恭伸投手(3年)対履正社打線の図式となる。ともに初優勝をかけた一戦。究極の「矛」と「盾」による最終決戦の見どころを、記録から探った。

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奥川は余力を残して決勝を迎える。18~21日の決勝直前4日間で、20日(対中京学院大中京)の87球しか投げていない。昨夏の吉田輝星(金足農)が直前4日間で438球投げたのに比べても約5分の1。消耗度は明らかに違う。

練習で笑顔を見せる星稜・奥川(撮影・横山健太)
練習で笑顔を見せる星稜・奥川(撮影・横山健太)

今年から決勝前日にも休養日が設けられた。過去に悪天候で決勝が順延したケースがある。75年小川淳司(習志野)は2日順延、01年近藤一樹(日大三)は1日順延の回復もあって優勝投手になったが、それでも大会中に2日以上の連投があった。今回の奥川は準々決勝の仙台育英戦で登板回避。休養日以前にも2日連投はない。本調子なら履正社打線から再び奪三振ショーとなる可能性もある。ちなみに夏の大会決勝で最多奪三振は22年浜崎真二(神戸商)34年藤村富美男(呉港中)12年藤浪晋太郎(大阪桐蔭)の各14個(延長戦を除く)。最多記録更新があるかもしれない。

星稜のチーム成績
星稜のチーム成績
星稜の投手成績
星稜の投手成績

12年藤浪は光星学院(現八戸学院光星)との決勝で最速153キロだった。奥川が決勝の大舞台で07年佐藤由規(仙台育英)13年安楽智大(済美)の持つ球場表示最速の155キロに並べば、新たな伝説となる。

打撃練習で快音を響かせる履正社・井上(撮影・横山健太)
打撃練習で快音を響かせる履正社・井上(撮影・横山健太)

奥川に立ち向かう履正社の打力は圧倒的だ。5試合すべて7得点以上。珍しいのは、ここまで盗塁を1個も記録していない(盗塁死もなし)。5試合で長打23本は昨年優勝の大阪桐蔭(6試合で25本)と同等のペース。盗塁無用の打線ではある。盗塁ゼロで優勝なら史上初の珍記録になる。

奥川にはセンバツで17三振を奪われ完封負けしたが、当時は実戦から遠ざかる春の初戦だった。今回は打線の仕上がりが違う。制球力抜群の奥川相手に待っていてもカウントを追い込まれるため、積極的に打ちに行くことが予想される。今大会の履正社の初球打率はなんと6割(25打数15安打)。初球以外の3割2分3厘(158打数51安打)と比べても、初球に狙いを絞って1発で仕留める力は高い。積極打法は見どころの1つになりそうだ。

履正社のチーム成績
履正社のチーム成績
履正社の投手成績
履正社の投手成績

明暗を分けそうなのは先取点。過去の決勝は98回行われた。大会は100回だが、米騒動と戦争の影響で2大会が中止。引き分け再試合の69年松山商-三沢、06年早実-駒大苫小牧は再試合の結果を採用すると、98回の決勝で先取点を挙げたチームは70勝28敗で勝率7割1分4厘。先手必勝の傾向が強い。【織田健途】