侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。オリックス山本由伸投手(22)は、150キロ超えの快速変化球と、無邪気なマウンドさばきで世界に挑む。

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夢舞台でも、“バレない変化球”を駆使する。山本の最速はプレミア12で計測した158キロ。直球は常時150キロを超え、変化球も150キロを超える。「投げ方、腕の振りは真っすぐとほとんど同じ感覚。握りを変えているだけだから、真っすぐに近いスピードになると思うんです」。

ポツリと漏らした“理想の投球”は「打者が打ってから『今の球種は…?』ってなるように。打ってから、球種に気づくようなボールが投げたいんですよね」。設定スピードは150キロ。球界最高峰のキレある直球に、高速フォーク、カットボールも150キロを超える。異次元の速度でキュッと曲げたり、ストンと落とす。

19年11月、プエルトリコ戦で登板する山本
19年11月、プエルトリコ戦で登板する山本

狙いは“凡打”で、三振は欲張らない。「強いボールで、芯を外す。当てにくる打撃になると、打ち取れるかファウルになる。ファウル狙いだと、強くスイングできない分、長打もなくなる」。22歳。冷静な分析で、日の丸を背負ったマウンドに向かう。

一瞬を大切に生きる。16年ドラフト4位でオリックスに入団。甲子園出場経験がなければ、アマチュア時代に代表選出されたこともない。「運がいいんです。僕は(分岐点で)すてきな人に出会えているだけ。周りの方に感謝しかありません」。岡山・備前市出身。高校は野球留学で宮崎・都城へ。その才能を山口和男スカウトに見いだされ、プロの世界に羽ばたいた。大人になった今でも、野球少年で「楽しいと思えるから、いつも成長できるんです」と笑みを浮かべる。

19年プレミア12で初の代表選出。夢の東京オリンピック(五輪)にも内定。「いつも以上にプレッシャーや緊張感があると思う。自分の投球ができるように準備と練習をしっかりして挑みたい」。山本の球威、球質は、初対戦では戸惑う。今季交流戦は登板全試合で白星を挙げ3勝。チームを10年以来、11年ぶりのVに導き、自身はMVPに輝いた。

山本の主な国際大会成績
山本の主な国際大会成績

6月11日広島戦(京セラドーム大阪)では7回まで“完全投球”。8回に先頭の広島鈴木誠に初安打を許すと、悔しげな表情から一転、笑顔をのぞかせた。「打たれたりする経験があるから、楽しい。真剣にやっているから、そう思う」。進化は止まらない。「ずっと、100点を目指しているけど、100点の投球は楽しくないと思う」。好奇心、探究心…。また1歩、未知の領域に踏み出す。【真柴健】