<指名を待つ男たち(1)>

ドラフト会議が11日に行われる。上位候補、母校や故郷の初のプロ野球選手候補、そして、指名漏れの悔しさからはい上がってきた候補…。さまざまな思いを抱きながら運命の“10・11”を待つ男たちを、全5回で紹介する。

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ドラフトファイル:菊地大稀
ドラフトファイル:菊地大稀

佐渡の子どもたちに、もっと野球を好きになってほしい-。桐蔭横浜大・菊地大稀投手(4年=佐渡)は、プロへ大きな夢を抱く。

9月26日、神奈川大学リーグ・神奈川大戦。前日の第1戦で完封勝利を挙げて臨んだ第2戦は、1点を追う8回2死一、二塁でマウンドに上がった。「全力でいきました」と、真っ向勝負で窮地をしのぎ、1回1/3を3奪三振の無失点。チームは敗戦も力強さを示した。

課題を克服した。今春の大学選手権・国際武道大戦は、先発して6回途中5安打3四球の2失点。1回戦で敗退し制球力不足を痛感した。1週間500球を掲げて投げ込み「下半身主導を意識し、コントロールも安定しました」。9月に入り、最速148キロもマーク。手応えをつかんだ。

新潟・佐渡市出身。豊かな自然を駆け回って育った。「足腰の強さは負けません。おいしいお米と魚介をたくさん食べて育ちました」。身長188センチ、体重93キロの恵まれた体で、素朴な笑みを浮かべる。佐渡高時代は「離島のエース」と注目を浴び、プロ志望届を提出するも指名漏れ。夢をあきらめず大学で成長した。

力投する桐蔭横浜大・菊地大稀(2021年6月7日)
力投する桐蔭横浜大・菊地大稀(2021年6月7日)

今夏、佐渡の父から、少年野球の部員数が減っていると聞いた。「僕がプロ野球選手になることで野球をする子どもたちが増えてくれれば」と練習にも力が入る。幼い頃、ワクワクしながらテレビの前でプロ野球を見た。今度は自分が希望を与えたい。夢の舞台へ-。ドラフトはもうすぐそこだ。【保坂淑子】