<指名を待つ男たち(1)>

ドラフト会議が11日に行われる。上位候補、母校や故郷の初のプロ野球選手候補、そして、指名漏れの悔しさからはい上がってきた候補…。さまざまな思いを抱きながら運命の“10・11”を待つ男たちを、全5回で紹介する。

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ドラフトファイル:黒原拓未
ドラフトファイル:黒原拓未

ドラフト上位候補で最速151キロの関学大・黒原拓未投手(4年=智弁和歌山)はプロ志望で大学生活を過ごしてきた。「やれることをやって迎えるだけですね」と武者震いする。

圧巻だった春の関西学生リーグで、株が急騰した。球威抜群の速球に、カットボールやチェンジアップも駆使し5勝1敗、3完封で防御率0・88。「1年から投げていたけれど、いい結果を残せていなかった。恩返しできました」。MVPで優勝に導き、全日本大学野球選手権でも躍動した。

関学大・黒原拓未(2021年5月25日撮影)
関学大・黒原拓未(2021年5月25日撮影)

好調の要因は「四球が減ったのが大きい」と明かす。今年から常にクイック動作で投げ、フォームのバランスを改善。三塁側に倒れていた悪癖が消えた。「走者がいる時、いない時で違う感覚だと投げづらい」。昨年、何げなく西武平良の投球を見て気付いたという。「ランナーなし、あり、どっちもクイックでした。俺も、もともとクイックの方がバランスがいいし、やってみようかなと」。

昨年11月に左肘遊離軟骨の除去手術を受け、傷が癒えるとクイックの精度向上に取り組んだ。タメをつくれず、球速が出にくい動作だが自己最速を更新した。

この春、初めて取り入れた“儀式”もある。「周りを見る回数を増やしました。試合が始まった瞬間やピンチではベンチを見るんです」。3年夏に甲子園に出場した智弁和歌山でも見せなかったしぐさ。「周りを見られないとピンチを抜け出せない」。視野も広くなった。憧れのプロで戦う準備を着々と整えている。【酒井俊作】