DeNAのタイラー・オースティン外野手(30)が、来日2年目に圧倒的なバッティングを見せつけた。今季は規定打席こそ届かなかったが、打率3割3厘、28本塁打。打者の攻撃力を表すセイバーメトリクスの指標「OPS」は、超一流の目安となる1・0超え。「RCAA」という指標ではチームトップ、過去の強打者にも引けをとらない数字をマークするインパクトを残した。
今季のオースティンは107試合で28本塁打、OPSは1・006をマークした。今季の規定打席到達者でOPSが1・0以上は両リーグで鈴木誠(広島)だけ。今季はリーグ平均OPSが・698の「投高打低」だっただけに、非常に価値のある成績だった。
チーム総得点のうち何点生み出したかを表す「RC」を見ると、チームでは佐野、桑原に次ぐ83・9点(リーグでは8位)。規定打席未満の選手で80点以上も稼いだのは、03年ペタジーニ(巨人=93・9点)以来。四球と敬遠が区別された55年以降の記録で、80点以上は2人だけだった。
RCをリーグ平均と比較した「RCAA」を用いるとよりすごさが際立つ。この指標ではチームトップの36・96で、鈴木誠、村上に次ぐリーグ3位。過去の規定打席未満の選手と比べても、歴代2位だった。ランキングに名前の出る選手はホーナーやブライアント、ブラッグスら、出場機会が多くない中で強烈な印象を残したスラッガーが並ぶ。そんな強打者たちにも引けをとらないインパクトだった。
ハイレベルなRCAAだったが、裏を返せば、欠場すると控え選手を出すことになるので、チームにはマイナス。そういう点でも、オースティンの不在は大きな痛手だった。コロナ禍の影響で開幕から約3週間も出遅れたことは不運だったが、残留が見込まれる来季は打撃はもちろん、欠場数を減らすことでもチームに貢献したい。【多田周平】(この項おわり)
◆セイバーメトリクス◆ 米野球学会の略称「SABR(セイバー)」と測定基準を意味するメトリクスを組み合わせた造語で、野球を客観的データで分析し、選手の評価を行ったり戦術を組み立てる試み。メジャーでは浸透しているデータ指標。