WBC1次ラウンドC組で日本と対戦する韓国代表は、今回はどんなチームなのか。日本で唯一の韓国プロ野球専門のジャーナリストとして知られる室井昌也さんに聞いた。【取材・構成=古川真弥】

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★若手&ベテラン

今回の韓国代表は、例えるなら「ヘルシー幕の内弁当」です。とんかつ、ステーキ、ローストビーフといった絶対的なスーパースターはいませんが、蒸し鶏、海老しんじょ、豆腐ハンバーグのような、1人1人が味わいのあるおかずになれる、バランスの取れたチームです。

前回23年WBCで1次ラウンド敗退後、KBO(韓国プロ野球)は代表の世代交代を進めました。同10月のアジア大会には独自の年齢制限を設け、若手で臨み優勝しました。今回の代表メンバーは、そこで育った選手たちが多くいますが、一方で投手、野手ともベテランも招聘(しょうへい)。柳志炫監督のチーム力で戦う意図が見えます。

★代表復帰 柳賢振

【投手】

絶対的なエースはいません。先発は第2先発も含め、柳賢振、高永表、郭彬、元兌仁、孫珠瑛、蘇珩準、鄭宇宙の7人で回すことになるでしょう。柱がいないこともありますが、どのみち球数制限があり、継投勝負になります。

抑えは、柳監督はカージナルスのオブライエンを指名しましたが、趙丙炫、昨季韓国セーブ王の朴英賢、タイガース3A高祐錫の4人で7、8、9回を抑えるイメージだと思います。

個人的に期待しているのは柳賢振です。メジャーで11年プレーし通算78勝を挙げ、24年から韓国に戻り、今回、16年ぶりに代表復帰しました。日本戦で先発すれば面白い。球数制限で打者1回りでしょうし、ベテランの柳賢振で打たれたら仕方ない。ダメージが少ないと思います。

2009年3月、第2回WBC第1ラウンド、日本戦で登板した韓国・柳賢振
2009年3月、第2回WBC第1ラウンド、日本戦で登板した韓国・柳賢振

★大勢打ち 金周元

【野手】

相手や状況によって変わると思いますが、予想オーダーを挙げます。

1番遊撃 金周元

2番二塁 金慧成

3番左翼 李政厚

4番一塁 盧施煥

5番右翼 安賢民

6番三塁 金倒永

7番DH ジョーンズ

8番捕手 朴東原

9番中堅 朴海旻

ジョーンズが7番? と突っ込まれそうですが、むしろ、それがいい。前回の失敗にエドマンを重用しすぎたことがあります。オーストラリア戦、日本戦と1番で使ったが打てず、9番に下げたチェコ戦から機能しました。1人に背負わせるのではなく、チームでどう戦うか。そういう意味では、今回は野手にウィットコムという韓国籍ではないメジャーリーガーがもう1人いるのもプラスです。

投手同様、かつての李承燁、李大浩、金泰均のような絶対的な存在はいません。その中で中心は、やはりメジャーでプレーする李政厚です。昨年9月に早々と主将に指名され、他のメジャーリーガーとのパイプ役が望まれます。また第1回大会の主将は元中日の父李鍾範さん。東京ドームのスタンドで父親を応援していた息子が、20年たって同じ主将を務めるわけです。

個人的には1番遊撃に予想した金周元に期待します。23歳と若く、長打力と足を兼ね備えた両打ちですが、いわゆる「持ってる」選手。ブレーブス金ハソンはオフに右手を負傷し招聘されませんでしたが、呼ばれていれば金周元は控えでした。柳監督も金ハソンの欠場は「痛い」と言っていますが、金周元にはチャンス。現在、韓国は日本に10連敗中ですが、最後に戦った昨秋の強化試合第2戦、9回裏に巨人大勢から同点ソロを放ったのが金周元です。勝ちはしませんでしたが、負けなかった。韓国にとっては大きな1発。そういうストーリーもあります。

2025年11月、韓国対日本の9回2死、大勢からソロ本塁打を放つ金周元
2025年11月、韓国対日本の9回2死、大勢からソロ本塁打を放つ金周元

韓国代表はここ数年、国際大会で結果を出せていません。国内の一部の発言だけ翻訳され、日本には、野球人気が低迷していると伝わっているかもしれません。実際は正反対です。人口約5000万の国で、昨年の観客動員数は1200万人超。およそ4人に1人が見に行きました(※人口約1億2000万の日本は昨季入場者数約2700万で、ほぼ同じ割合)。若い女性を中心に盛り上がっており、「ファッション・ファン」と呼ばれるライトファンもいます。野球場で盛り上がることが、若者のおしゃれ。仮に結果が出なくても、国内の野球人気に影響はないでしょう。

もちろん、KBOは結果を望んでいますが、報奨金は前回までの4強以上から8強以上に下げました。日本に勝つハードルは高い。おそらく、日本戦翌日の台湾戦に照準を定めるはず。そのためには、初戦のチェコ戦で余計な投手を使わずに勝ちたい。前回、初戦オーストラリア戦でつぎ込みすぎ、1点差で敗れた反省を生かせるか。まずは初戦がカギとみています。


◆室井昌也(むろい・まさや)1972年(昭47)10月3日、東京・豊島区生まれ。日大芸術学部演劇学科中退後、劇団活動、テレビのリポーターなどを経て02年韓国に留学。韓国プロ野球の取材を開始する。04年から著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」を毎年発行。06年から現地紙コラムニストを務める。20年から沖縄のFMコザ(現在はFM那覇)で「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」に出演中。ストライク・ゾーン代表。

韓国代表メンバー
韓国代表メンバー