ヤクルト村上宗隆内野手(22)の3冠王に注目が集まっている。過去に3冠王は7人、11度。22歳の村上が3冠王を獲得すれば、38年秋の中島(巨人)と82年落合(ロッテ)の29歳を抜いて史上最年少となる。2位と25本差の本塁打王、45点差の打点王は間違いなく、1分7厘差の首位打者を守り切れるかがポイントだ。

3冠王の7人、11度に比べ、2冠は53人、88度。内訳は本塁打と打点の2冠が66度で、打率と本塁打が11度、打率と打点も11度。首位打者を取れずに、3冠王を逃す例が圧倒的に多い。同じ2冠でも、限りなく3冠王に近い「1部門だけ2位」を調べると、このケースは過去に14人、23度。こちらも打率だけ2位が半分以上の12度ある。

【イラスト】1部門だけ2位で3冠王を逃した選手
【イラスト】1部門だけ2位で3冠王を逃した選手

1部門だけ2位の2冠を複数回記録したのが中西(西鉄)、長嶋(巨人)、王(巨人)の3人。中西は20歳の53年に打率4厘差、22歳の55年は1打点差で3冠王を逃した。56年は残り1試合で同僚の豊田に打率5毛差へ迫るも、三原監督が最終戦で2人を欠場させて2冠止まり。58年は84打点で並んでいた葛城(大毎)が最終戦の最終打席で本塁打を放ち、またも1打点差で涙をのんだ。長嶋は新人の58年を含め3度。チャンスが何度もありながら、この2人は3冠王になれなかった。

【イラスト】64年セ・リーグの打撃3冠争い
【イラスト】64年セ・リーグの打撃3冠争い

王は1部門だけ2位の2冠が5度ある。最初は24歳の64年だが、この時の状況が現在の村上と似ている。8月終了時の王は打率3割2分5厘、51本塁打、111打点で3冠トップ。本塁打は野村(南海)が持っていた当時のプロ野球記録52本へあと1本に迫っていた。8月終了時で各球団が残り20試合前後になっており、大差をつけていた本塁打と打点は安泰。2位江藤(中日)と9厘差の打率が問題だったが、9月は王が54打数15安打の打率2割7分8厘に対し、江藤は50打数19安打の打率3割8分。王は55本塁打の新記録をつくったものの、打率は江藤に逆転されて3厘差の2位で3冠王を逃した。

【イラスト】64年王と村上の成績比較
【イラスト】64年王と村上の成績比較

王は64年の後も65、68、69、70年と経験し、73年にようやく3冠王へたどり着いた。「1部門だけ2位」の条件を外しても、先に2冠を獲得し、その後に3冠王は65年野村と73、74年王しかいない。3冠王は最初にきたチャンスをものにしないと厳しくなる傾向にあるが、村上はどうなるか。【記録室】