2年前の今頃、岡田彰布は西宮の自宅でテレビを見ていた。まだ阪神監督のカムバックが決まる前。大好きな高校野球の夏の大会をチェックしていた。目に留まったバッターが2人いた。ひとりは智弁学園の選手。もうひとりが高松商の浅野だった。「浅野はエエよ。体がしっかりしているし、スイングスピードは相当や。1人ずぬけた力と思う」。インパクトは大だった。
そこから物事が動いた。阪神からの監督要請があり、これを受けた。チーム作りに進み、最初の仕事がドラフト会議だった。浅野に関しては、早くから巨人が指名を公言。阪神は公表しなかった。会議当日の朝、岡田の携帯にメールが入った。時の巨人監督、原辰徳からだった。「先輩、いきなり激突ですね」といった中身だった。
巨人から探りが入った。「返信しようと思ったけど、そうすればウチも浅野で行くとわかってしまう。そやからスルーしたわ」。
久しぶりのTG激突。最初にクジを引いたのが原だった。その時点で岡田に当たりクジは残っていなかった。笑う原の横で困ったような表情の岡田だったが、1日たったあと、こんな話を直接聞いた。「浅野を外したら森下。これは決めていたし、他が1位でいくことがないのも分かっていた」。2段構えの戦略で、外れ1位で森下がすんなりと決まった。
昨年の日本一シーズン。ルーキー森下の働きは想像以上だったし、2年目の今シーズンはさらなる進化の期待が高かった。遠回りしたものの、後半戦で結果を出し始めた。8月13日の巨人戦(東京ドーム)で、岡田は森下を初めて4番に据えた。するとどうだ。4番の初打席で2ランホームラン。実に気持ちのいいアーチとなった。
ところが翌日の14日、浅野に強烈な一撃を浴びた。満塁ホームランである。これで阪神は敗れ、重要な戦いを落とすことになった。
直接対戦で繰り広げられたドラフト1位を巡る縁というかドラマ。1人は2年目でトラの4番での1発。もうひとりは10代での満塁本塁打…。さすがドラフト1位、互いに成長の証しを示した。
正直、浅野の1発は阪神にとってはショッキングなものになった。首位の広島に4ゲーム差、2位の巨人に3ゲーム差。残り試合を考えれば、ギリギリのところに追い込まれた。残りは35試合。「連覇」を考えれば、上に2チームいるのが辛い。広島だけでなく、巨人の動向も気になる3位だ。連覇には早く巨人(広島の場合もあるが)をつかまえ、2位に上がって、勝負どころを迎える。これが阪神の現状の理想型といえる。
残り巨人とは4試合、広島とは6試合。現在の広島との4ゲーム差を考えれば、これ以上離されると極めて厳しい状況になる。ここでグッと踏ん張れるか。ディフェンディングチャンピオンの底力が問われる時がきた。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)






