甲子園を目指した後は、もう1つの日本一を-。高校球児にとって、新たな目標ができるかもしれない。

全日本野球協会(BFJ)は1日、来年2月に横浜で開催する「第1回 Baseball5 日本選手権(仮称)」の大会概要を発表した。年齢などの出場条件を満たせば、誰でもチームを結成して応募できる。

ベースボール5の日本選手権開催を発表する全日本野球協会・山中会長(撮影・古川真弥)
ベースボール5の日本選手権開催を発表する全日本野球協会・山中会長(撮影・古川真弥)

ベースボール5は、ボール1つでプレーするダイヤモンド型新スポーツ。いわば“手打ち野球”のようなもので、日本は昨年初めて代表チームが結成され、ワールドカップ準優勝。現在、WBSC世界ランキング4位につける。26年のダカール・ユースオリンピックの公式種目となっており、BFJが普及活動を進めている。

1チーム5人制、5イニングで行われるが、特徴的なのは男女混合であること。柔道の団体戦や卓球などの混合ダブルスはあるが、それらはもともと男女別のカテゴリーがあってのこと。その点、ベースボール5の大会は男女混合が一般的で、日本選手権も例外ではない。控え選手を含め1チーム5人以上8人以内とされるが、男女いずれも2人以上を含み、最大4人までとされる。つまり、最大の8人で臨む場合、男女比は4:4の同数しかないし、実際にプレーする5人全員が同性はあり得ない。

通常は男子の方が運動能力が高いため、女子の打順や守備位置が戦略上のカギにもなる。BFJの長久保由治事務局長は「女子がファーストを守れるチームは有利のようです」と話す。野球やソフトボール以上にスピーディー。捕球して、どれだけ速く一塁送球できるかは非常に重要。距離のある三塁は肩がある男子に担わせたい。捕球にたけた女子がいれば一塁を任せられる。そんな構想が描ける。

26年のユースオリンピックもにらんでの日本選手権開催となるが、興味深いのは、高校球児にも門戸が開かれていることだ。BFJは昨年から日本高野連と協議を重ね、高野連所属の高校生の出場も認められた。長久保事務局長は「やはり今、世の中が多様性の時代になっている。野球が好きで続けている高校生だが、1つの発見があるのではと期待している。また、女子と一緒にやることで、違うコミュニケーションもとっていかないといけない。スポーツを愛する人としての成長も期待できる」と話した。

もちろん、野球も女子選手はいるし、男女一緒にプレーすることも、中学までは珍しくない。だが、高校に進めば、公式戦に男女一緒に臨むことはできない。ベースボール5であれば、男女一緒に選手として日本一を目指せる、いや、一緒に目指さないといけない。野球ではスタッフとして支えた女子マネもプレーできる。男女が協力して勝利を目指すことで「人としての成長」につながるのは、その通りだと思う。

発展途上のスポーツだけに、一つの大会が進む中で新たな戦略が生み出されることも珍しくないという。日本での正確な競技人口は不明だが、おそらく、まだ数百人レベル。男女問わず、成長盛りの高校生の中から、未来のメダリストが誕生するかも知れない。【古川真弥】

「Baseball(ベースボール)5」公式球(2021年12月14日)
「Baseball(ベースボール)5」公式球(2021年12月14日)