宜野座キャンプも26日に打ち上げ。1カ月が長かったか。早かったか。個人によって感じ方は違うだろうが時がたつのはみんな平等だ。そんなことを思っていると福留孝介が前を通った。唐突に思い出す。福留孝介の“キャンプ早退”だ。

福留が宜野座キャンプを“早退”し、周囲を仰天させたのは16年2月だから、もう4年も前のことになる。前監督の金本知憲就任1年目で注目されたキャンプでの、まさかの「VIP待遇」だった。同じうるう年だった同年はびっしりと29日まで鍛えたが、福留は約1週間程度早く、単独で打ち上げている。

結局、それは16年だけでその後は他の選手同様、最後までキャンプにいる。今年も当然、26日に打ち上げる。早退しないのかな? 冗談交じりにそんな話をしてみた。

「帰ってもやることないしね」。いかにもベテランという様子でしれっと答えた。もちろん、そんなことはないのだろうが、若手、中堅と同じように最後まで汗を流そうということだ。

その実力を知りつつ、やや失礼ながら、こういう見立てをしている。4月で43歳を迎える球界最年長選手。プロ22年目のこの男が試合に出なければ出ないほど阪神は強くなっているのでは、ということだ。福留に頼らなくても高山俊を中心に若手がカバーできれば、それだけチーム力は上がっているということになる。

「そうですね。自分ができなければ、そうかもしれませんね。でもできたらどうなのか、という話です。周囲がどう見ているかは知りませんが自分はできると思うからやっている。若い選手がそこを超えていくかどうか。自分から譲るとかそういう気はさらさらないですよ」

福留はキッパリ言った。それはそれで頼もしい。平均寿命も伸びている現在、野球選手もそうであってもおかしくはない。福留が言う通り、実力で定位置を奪っていくことが大事なのは言うまでもない。

そうは言っても長いシーズン、疲れるはずだ。福留を少し休ませながらプレーさせ、そこを埋めるために出場する若手がいつの間にか、そのポジションを奪う。そういう形が理想だろう。指揮官・矢野燿大の頭を悩ませるような福留の好調、それを追い落とそうと狙う若手の台頭。そんな構図が、今年こそ、しっかりと生まれれば阪神は優勝へ近づける。(敬称略)