来季、阪神に「テル騒動」が巻き起こるのでは-などとラチもないことを思っている。阪神が交渉権を獲得した近大の佐藤輝明に指揮官・矢野燿大らが指名あいさつに出かけた。

佐藤は「さとう・てるあき」だ。矢野は佐藤のことを何と呼んだのだろう。選手のファーストネームなどを省略して呼ぶのが好きなので早々に「テル」と言ったかもしれない。佐藤自身もそう希望しているらしい。現地に赴いた虎番記者・只松憲に聞いてみる。

「いえ。普通に『佐藤くん』と呼んでいました」。そうか。しかし入団すると「テル」と呼ぶのではないか。3位指名で同姓の佐藤蓮もいることだし。だが、これはややこしい。阪神で「テル」と言えば、実は、矢野その人のことだ。

矢野は現役時代の途中まで「矢野輝弘」だった。読みは同じ「やの・あきひろ」。プロ20年目だったちょうど10年前の10年、心機一転で登録名を変更し、指導者になった今も同じだ。

その矢野が中日に入団したとき、当時の指揮官・星野仙一は矢野のことを、なぜか「テル」と呼んだ。先輩たちもそれにならった。以前、矢野本人にそれについて聞いたことがある。

「まあ、あの漢字を『あきひろ』と呼ぶのはめずらしいですからね」。矢野は理由になっているような、なっていないような説明をしてくれた。

阪神で今は監督なので矢野を「テル」と呼ぶ人物はいないと思う。中日で先輩だったヘッドコーチの清水雅治も「監督」と呼ぶ。だから来季、矢野が照れくささを隠して佐藤を「テル」と呼ぶのはいい。

しかし他の選手が「おい! テル!」などと言い出したらどうなるだろう。頭では分かっていても何となくムッとしてしまうかもしれない。

星野がそうだったように下の名前で呼ぶのは矢野に限ったことではないが、この際「佐藤」とか「植田」とか名字で呼んだ方がいいかもしれない。その方がスッキリしてチームのムードも変わるかも…などと思ったりする。

試合は中日のミス連発で勝った。前日、当たりクジを引き当てた矢野の強運が続いているようだ。佐藤蓮は「レン」になるだろうし、そもそも選手の呼び方は大きなことではないが、この幸運を来季につなげていくためにも、何らかの変化が必要では-と真面目に思っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

03年9月10日、ベンチで腕組みをしながら笑顔を見せる阪神星野監督。手前は矢野
03年9月10日、ベンチで腕組みをしながら笑顔を見せる阪神星野監督。手前は矢野