高卒4年目・井上広大が今季初めて1軍に昇格した。18日付日刊スポーツ1面(関西版)は「井上スタメンも」と前景気をあおる見出しである。ルーキー森下翔太と入れ替える形での参戦。打線がふるわない中、起爆剤として期待されるという趣旨だ。
しかし、この日。試合前に発表されたオーダーに井上の名前はなかった。上げたらすぐに使うのは1つのパターン。指揮官・岡田彰布はそうはしなかった。代打要員なのか。いや、もちろん違う。そこにはちゃんと意味があるのだ。
虎番キャップの囲みが解けた岡田が通路に来た。聞いてみるか。そう思ったそのとき井上が前を歩いていた。彼を指さしながら「使わんかったですね?」。アンテナを張り巡らしている岡田はすぐにピンとくる。返ってきた答えはこうだ。
「そんなんおまえ。何言うてるんよ。明日よ。遠藤の方がエエやろ? ファームでもやっとるやろし」
岡田の選手起用には“法則”がある。簡単に言えば「結果の出る可能性の高い使い方をする」というものだ。当たり前に思えるが練習のときから実践する。例えば右打ちの外国人のフリー打撃には球の見やすい左腕投手を当てることを意識。練習からでも気持ちよくやれた方がいいという考えからだ。
「昭和型」と思われる指揮官だがその面ではきわめて現実的だ。よりよいイメージを持たせてプレーさせようという狙いである。この日の先発は九里亜蓮だった。そして19日の予告先発は遠藤淳志。遠藤も好投手ではあるが“格”ではやはり九里が上だろう。だからこそ「遠藤の方がエエ」という言葉が出てくる。
これは「先発投手に少しでも早く勝ち星をつけてやりたい」という考えと同じだ。この日もサヨナラ勝利で9回まで投げきった西勇輝に白星がついたことをことのほか喜んでいた。
その井上と遠藤。記録部に調べてもらうと今季ファームではここまで対戦がない。昨年まで10打数1安打。それが1、2軍合わせての全成績だ。好結果は出ていないが、岡田の言う通り、打席には立っている。見たこともない投手と対戦するより、打席で球を見た経験が甲子園の大舞台で生きてくるかもしれない。勢いに乗る広島をサヨナラ勝利で止め、第2ラウンドの19日、1つのポイントはそこか。とりあえず岡田阪神の戦いは面白い。(敬称略)




