「おっ!」。そう声を上げた虎党も少なくなかったのでは。7回2死一、二塁。中日の2番手・山本拓実の初球147キロをとらえた佐藤輝明の打球は右翼へ高々と上がる。しかしスタンドインとはならず、最後は右飛に終わった。

あそこで佐藤輝に1発が出ていれば、これ以上ない展開だったろう。同時にバンテリンドームがそれだけ本塁打が出にくい球場ということも感じた。ここでの試合はロースコア、控えめになることが多い。はっきり言えば“地味”なのだ。

そういう地味な展開になりがちな試合をしっかりと勝ちきった阪神。1つのキーは「四球」だったと思う。その意味では、今季ここまでを象徴する勝利だったかもしれない。

終わってみれば3得点。5回はノイジーの適時打だったが4回の先取点は好投手・涌井秀章の押し出し四球によるものだった。2死一塁から4番・大山悠輔、5番・佐藤輝が連続四球。そしてこの日の6番スタメンだった島田海吏が押し出し四球を選んだ。

6回は四球が絡んで好機で8番・木浪聖也が犠飛を打ち、3点目。繰り返して申し訳ないが実に地味な得点の重ね方である。しかし、この日、放った阪神の6安打はすべて単打。それだけにこんな粘っこい攻撃が効果的だった。

これで阪神が選んだ四球は36試合で132個となった。リーグでダントツの多さだ。開幕から続くこの傾向、一時は止まるかと思われた時期もあったが、ここまで続いている。それが阪神打線の武器になっているのは間違いないだろう。ちなみにもっとも少ないのは現在の対戦相手・中日で、この日を終えて77個。阪神とは2倍近い開きがある。

「四球がね、ヒットと同じぐらい効果があるという意識を持つことが大事ですよね」。少し前に話をした打撃コーチの今岡真訪が言っていたことだ。そうやって選んだ四球を犠打、あるいは盗塁で先に進め、少ない安打でも得点していく。野球の基本である攻めができているということかもしれない。

四球が多いのはボールを見極めることができているということだ。開幕時の不振から立ち直ってきた佐藤輝の様子を見ても、それは明らかではないか。ストライクを打つ。コースを外れた球は見送る。そんなシンプルなことが高い確率でできる打線。6連勝の1つの要因だろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)