しかし、これはホンマにいきよるんちゃうか。知らんけど。そんな会話を交わした虎党もいるだろう。昨季までリーグ連覇を果たしたヤクルト相手にこの戦いぶり。浮かれるのは厳禁だけど「アレ」の予感が漂うことは否定できない。

イヤな流れだったと言える。1週間の流れを左右するとされる「火曜の男」となった村上頌樹がこの日も好投。本調子ではない感じだったが早々にもらった3点のリードを守り、5回までを無失点で抑えた。

だが6回、2死一塁から山田哲人に被弾。3-2と1点差に詰め寄られてしまった。こうなるとヤクルトはこわい。昨季なら逆転されていたのでは…。そう言えば分かってもらえる人もいるだろう。

だがここでダメ押しの1発が出る。7回に飛び出したノイジーの3ラン。ヤクルトに傾きかけた勝負の流れを一気に取り戻した。やはり本塁打は大きい。と書いて、いや本塁打だけではない、という話だ。

四球である。大きかったのは1点差に迫られた7回、3番手エスピナルから先頭・近本光司が四球を選んだことではないか。この打席、近本は2球で追い込まれた。しかし2ストライクナッシングからファウルで粘り、9球で四球を奪ったのである。

これで出だしをくじかれたエスピナル、続く中野拓夢には5球で連続四球。そしてノイジーには3-1からストライクを取りにいった球を痛打された。この流れは近本の四球がつくったと言っても過言ではない。近本は先制の3回、1死二塁でも四球で出て、中野からの3連打につなげた。

近本が象徴しているけれど、これまでも書いてきたように今季の阪神は「四球」がキーになっている。この日、阪神打線が選んだ四球は「6」。これで「150」の大台に乗った。これはリーグ最多だ。

さらに投手陣である。村上は1つ、K・ケラーが1つでこの日2個。これを合わせて今季ここまで阪神投手陣の出した四球は「86」。リーグ最少だ。

「(7回の中野には)3-2までは待て、言うとったんや。エンドランしよう思てたから。四球になったけど。やっぱ大きいよな。四球でヒット(本塁打)1本で3点入るんやから」。指揮官・岡田彰布も快勝満足そうに話した。快勝だが村上の被弾も四球の走者がきっかけ。勝負は常に紙一重なのは肝に銘じたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 3回表阪神1死満塁、ノイジーの中2点適時打で生還した近本(左)を迎える村上(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 3回表阪神1死満塁、ノイジーの中2点適時打で生還した近本(左)を迎える村上(撮影・鈴木みどり)