これはアレか-と浮かれるのはやめておく。阪神は5連勝で貯金は今季最多の「14」となった。通算28勝14敗1分けは完全に2勝1敗ペースである。「アレ」はともかく、乗りに乗っているのは間違いない。

よう勝てたな。はっきり言ってそういう展開だった。苦しむヤクルトを相手に1回、いきなり無死一、二塁の好機をつくったが後続なく無得点。すると先発・伊藤将司が2回に自身初の1試合2死球を、それも1イニングで出すなど乱れ、2点を先制された。

阪神は大山悠輔、ミエセス、そして近本光司のソロ3発で勝ち越したものの勝利の見えてきた8回に好調救援陣の一角・加治屋蓮がまさかのボークで追いつかれる。さらに今季は緻密さが売りの攻撃で「三振ゲッツー」が2度もあった。これは負け試合の展開だ。

それをひっくり返した。そこには今季の粘りがある。虎党ならすでに気づいているだろうが2死から得点できるのだ。この日は延長10回2死無走者から近本の中前打、盗塁をきっかけに好機を広げ、相手投手の乱調もあり、勝ち越した。

前日も同様である。9回2死走者なしからノイジーの飛球を相手野手がミス。そこからチャンスを広げ、佐藤輝明の逆転2点打が出ている。そもそも、この5連勝の始まりも同じ2死走者なしからだ。

20日広島戦(甲子園)は0-0の9回2死走者なしから大山が二塁打で出塁。佐藤輝は歩かされ、そこまで無安打だった6番森下翔太がうれしいサヨナラ安打を放っている。「まずは塁に出ないことには点も入らない。野球は2死からというところもあるので」。大山がそう語ったのも記憶に新しいところだ。

実際、阪神があげた今季180得点のうち、2死からマークしたそれは71得点で、もっとも多い。追い込まれてから点が取れているのは、なぜか。

「別に変わったことはやってないしな」。指揮官・岡田彰布も言うように相手のある勝負、そこに明確な理由があるのかどうかは分からない。言えるのは好調な投手陣、さらにこの日は木浪聖也、ノイジーが見せた固い守備、そして1点を大事にする岡田率いる攻撃-と「粘り」の要素は多いということだ。

もちろん、このまま最後まで行くと考えるのは、やはり、楽観的だろうが若いチームが自信をつけているのは事実である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 5連勝し、ナインをハイタッチで迎える岡田監督(手前)(撮影・浅見桂子)
ヤクルト対阪神 5連勝し、ナインをハイタッチで迎える岡田監督(手前)(撮影・浅見桂子)
ヤクルト対阪神 ヤクルトに勝利し、ギャルポーズをとる佐藤輝(撮影・藤尾明華)
ヤクルト対阪神 ヤクルトに勝利し、ギャルポーズをとる佐藤輝(撮影・藤尾明華)