これはまずいかもしれない。でも今年は違うからな-。ずっと阪神戦を見ている熱心な虎党ならそう思ったのではないか、と勝手に想像する瞬間がある。4回のことだ。

先発・大竹耕太郎は立ち上がりに少し苦しんだがすぐに復調。3回を3者凡退で終えた。さらに4回も秋広優人、岡本和真を切り、2死走者なし。大城卓三も二ゴロに切り、この回もクリーンアップを3人で料理した-と思った瞬間だ。

バウンドが変わったのかどうか平凡に見えた大城のゴロを二塁・中野拓夢が弾いた。0-0の試合で失策の走者。これは少々、イヤな感じだ。だが大竹は続く6番長野を1球で投ゴロに打ち取り、事なきを得た。こういうシーンが今季は目立つのである。

「そうだね。ちょこちょこエラーも出てるけどな。それが失点につながらないんだよ。今年は。それよりもいいプレーが目立つだろ? 失策が失点にならないのは投手、バッテリーがしっかりしているからだけど守りもいい面は出ている。チームは日々、成長していると思うよ」

ヘッドコーチの平田勝男がいつもの明るい調子ながら冷静な目で話した。平田の言う通りである。この中野で今季の失策は「26」になった。これは最下位にあえぐ中日に次いでリーグワースト2位だ。はっきり言って近年の課題であるこの点に関しては相変わらずという部分はある。

だが、それが点にならない。それで負けない。適時失策は4月20日広島戦(甲子園)の8回に大山悠輔が記録した1つだけ。結果としてエラーが得点につながってしまうのは適時失策だけではないが、本当に今季は「あのミスが…」という試合が少ない。

「エラーなんか、そら出るよ。そんなんおまえ」。指揮官・岡田彰布は常々、そういう話もする。ミスは仕方がない。それが失点につながり、敗戦に結びつかなければ、それでいいとは言わないまでも大きな影響はないのだ。今季はそこが面白い。

平田は03年の優勝当時、闘将・星野仙一の専属広報だった。連日「強いですね」「まだまだだろ~」みたいな会話を交わした、あのシーズン。開幕から強く45試合を終えて30勝14敗1分けの「貯金16」だった。そう、今季とまったく同じ数字である。だからどうということもないけれど、やっぱりドキドキするのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回裏阪神2死二、三塁、中野の2点適時打から生還した二塁走者近本(中央)を迎える岡田監督(左)(撮影・滝沢徹郎)
阪神対巨人 7回裏阪神2死二、三塁、中野の2点適時打から生還した二塁走者近本(中央)を迎える岡田監督(左)(撮影・滝沢徹郎)