才木浩人がしっかり復活した背景には梅野隆太郎の存在があったと思う。

この日の組み立ては理想的だった。力強い真っすぐで押して要所でフォークを落とす。才木のそれはクセがあり、曲がりながら落ちるという。それに対応し、体を張って止める。そこにブロッキングの名手・梅野の真骨頂があるのだ。

「ストレートで押して。それが7、8割ぐらい来るなと相手に思わせて。そこからが勝負ですね。フォークが武器なんで、そこは、いつも思い切って腕を振ってこいと言ってます」

快勝後の梅野は額に汗を浮かべ、そう話した。チームは今季初の8連勝をマークし貯金「17」、梅野がスタメンマスクの試合も21日広島戦(甲子園)から4連勝で通算成績も14勝13敗1分けと貯金となった。

もちろん開幕3連戦はすべて梅野が先発マスクだったので「貯金」はこれが初めてではない。だが勝てずに苦しんだ時期があったので、なんだか新鮮なような気もする。バッテリーを組む投手の好不調も影響するし、捕手は何かと難しい立場に置かれるもの。今季絶好調の阪神にあって数少ない不振要素として表現されることもあった。

「梅野なあ、ええリードしてたよ。だいぶ戻ってきよったな。やっぱり抑えんと感覚が戻ってけえへんからなあ-」

指揮官・岡田彰布はそう口にした。まさに「戻ってきた」という表現がピッタリかもしれない。坂本誠志郎が好調なのは歓迎すべきことだが、梅野の復調がないとアレに届かないのは言うまでもないのだ。

「そんなんおまえ、1年通じたら、そんな負けへんよ。悪いときが先に来たおもたらエエんよ」

岡田はそうも話した。開幕前に算段していたことがここまでほとんど成功していると言える今季、正捕手の部分では予想外に思えていたピースも埋まってきたということだろう。

「捕手が誰で勝敗はどうとか、そんな結果なんてあまり気にしてないよ。ここまでいい流れで来ていると思っています」。バッテリーコーチ・嶋田宗彦も手応えを感じている様子だ。

チームにも個人にも当然、波はある。この好調さが最後まで続くとはさすがに思わない。それでも落ち込んでもそれを乗り越え、最後に目標の場所へ、虎党が待ち望む「歓喜の秋」へ、みんなでたどり着ければ最高なのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回を終え梅野(左)と笑顔でタッチを交わす阪神才木(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 7回を終え梅野(左)と笑顔でタッチを交わす阪神才木(撮影・藤尾明華)