今季92試合目にして初めての出来事があった。1回の攻撃だ。1番・近本光司が一塁内野安打で出塁すると2番・中野拓夢は投手前にきっちり犠打を決めた。前日26日も近本が四球で出ると中野は送っている。阪神が2試合連続で1回に犠打を決めるのは今季初めてだ。13安打7得点、野手全員安打の猛攻はここから始まったのである。
指揮官・岡田彰布は手堅い野球が信条に思えるが、意外に犠打、それも序盤のそれはあまりやらない。2試合連続と書いたが、この試合で今季4度目だ。過去は4月21日中日戦(甲子園)が天候不順だった時など4月に2度あっただけ。序盤に関して言えば、バントより足を絡めて攻めていく方が好きなのだ。
だが後半戦に入って2試合続けて1回に犠打で送った。そこには何が何でも主導権を握りたいという思いが見える。虎番キャップの囲み取材が終わり「今日は風があって、なんか涼しかったのう」と言いながら通路を歩く岡田に言ってみた。2試合連続1回の犠打は初ですね、と。
「ふふん。そうか。まあなあ。走れ言うても走られへんもんなあ」。今季、阪神の盗塁数は前日までワースト2位の「27」だ。盗塁数が少ない理由はいろいろあるが、いずれにしても手堅い作戦で勝負をかけているのである。
2試合連続で犠打のサインが出た中野はどう感じているのか。2番を打つ選手にすれば当たり前ではあるが、何しろ今季初だ。少し気になって聞いてみた。
「それが役割ですから。後半戦に入ってやっぱり先制点が大事ですし、監督がいろいろ考えての結果だと思います。ああやって(バントを)決めて、流れをつなげていくことが大事だと思います」
3回には近本とのエンドランも決め、6回には安打も放った中野。2番打者としての仕事をきっちりこなした。それができるのも近本が猛打賞で出塁を続けたからだ。1、2番でクリーンアップにつなげ、そこが打点をマークする理想的な攻撃ができたのである。
あえて言わせてもらえば、これを続けることだ。今季はそこがなかなか難しい。カード3連戦3連勝も4月の中日戦と交流戦での西武相手にいずれも甲子園で2度あっただけ。巨人との対決を前に、2桁借金に陥った中日相手に、今季2度目のスイープを決めたいところだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




