過酷というか皮肉というか。「母親」は厳しい-という感じである。5年前の20年9月1日、指揮官・藤川球児が現役を引退するときに「甲子園のマウンドは?」という質問が出ると、こんな話をした。

「『球児』っていう名前をもらっているので。非常におこがましい話になりますけれども、日本で何人『球児』っていう名前の人がいるか分からないですけど自分にとっては母親みたいな存在じゃないですか」

甲子園は母親のような存在-。炎のクローザーとして活躍した彼を知るものなら、誰もがしっくりときたものである。だが自身が指揮官となった初めてのシーズンで“ワースト記録”をつくってしまった。

52年にフランチャイズ制が導入されて以降、阪神が本拠地開幕から5試合で白星がないのは初という。記録部から知らされて一番に感じたのが、5年前の話だった。京セラドーム大阪での結果もあるので甲子園に限った話ではないが、それにしても現実は厳しい。

そう言っておいて、こう書くのも申し訳ないが、この展開で「勝てる」と思うのはなかなか甘いだろう。3点を先制した2回だが先制は相手の失策。その後、犠飛、犠打で加点した。もちろん、それはそれでいいのだがスカッとしないのは適時打がないことだ。

この2連敗はもちろん、1-0で白星を収めた6日巨人戦(東京ドーム)も虎の子の1点は押し出し四球によるものだった。3試合で適時打が出なければ、やはり簡単には勝てない。そこで自軍にミスが出れば、なおのことである。

得点圏打率が苦しい。1割6分はリーグ5位だ。打率そのものも2割1厘(リーグ4位)と高くないので仕方ないとはいえ、やはり「ここで1本」がないと苦しい。この日も4回、下位打線がつないだ2死一、三塁で近本光司に1本出ていれば…とは思ったが打てないときは打てないものだ。

「うん。そうですね。なかなか、かみ合ってないですよね。今は我慢、我慢する時期かもしれません」。総合コーチの藤本敦士はそう話した。あくまで一般的は話で例外はあるのだが、例年、この時期は投高打低の傾向があるもの。

そこに加え、佐藤輝明を欠く阪神にとって、まさに我慢のときだろう。そんな中でも幸いというか、投手陣は踏ん張っている。この間に、早めの打線奮起に期待したい。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 6回表ヤクルト無死二、三塁、ビーズリーに降板を告げた藤川監督(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 6回表ヤクルト無死二、三塁、ビーズリーに降板を告げた藤川監督(撮影・加藤哉)