藤浪晋太郎から初めて本塁打をマークした選手は誰か。答えは森田一成。もっとも「練習」の話だ。鳴り物入りドラフト1位で入団した藤浪は1年目から沖縄・宜野座キャンプのメンバー入り。その13年2月19日に藤浪はフリー打撃で初めて打撃投手を務めた。最近でいうライブBPだ。

森田はそこで柵越えを放っている。「練習ですから。でも藤浪から打てたことは今でも覚えています。うれしかったな。ボクも必死でアピールしないとダメな立場だったから」

現在は子どもたちに野球を指導する阪神アカデミーでコーチを務める森田に聞いた話だ。知り合いにねだられ、サインを頼んだときも嫌な顔一つせず、丁寧に応じたという。藤浪はそういう男だろう。

その藤浪が甲子園に戻ってきた。「藤浪晋太郎」と書かれた黄色いタオルを振るファンもいる。大山悠輔に死球を出した際には大声でヤジを飛ばす虎党もいた。そう見るからそうなのかもしれないが、序盤から独特なムードだった。

そんな“磁力”のようなものに引っ張られたのか。序盤からあまり見ない展開になった。少し調子を落としているとはいえ、現在、阪神でもっとも頼りになる高橋遥人がいきなり1失点。結局、今季ワーストタイの8安打を浴び、6回2失点で降板した。先発としては合格だがそれでも高橋にすれば今季最短タイのイニング数だ。

中野拓夢、森下翔太にも失策が出た。猛暑もあって、本当にどうなるか分からないシーソーゲーム。それでも最後は勝ちきった。これは大きいと思う。抜け球を警戒し、藤浪が投げるときは左打者中心に打線を組む場合がある。そこについて球児に聞いた前日。「こちらは普段と変わらない姿で明日の試合に臨むというところ」という答えだった。

その言葉通り、普段と変わりのないオーダーで臨んだ試合を振り返って指揮官・藤川球児はこう話した。「前半は満塁で徳俵を割らずに耐えた。藤浪はタフだったと思う。高橋も粘り強くお互いにいい勝負をしていたと思う」-。

主軸の1人、森下が打席から離れていたようには見えたものの、とにかく死力を尽くした。その結果が連日の1点差勝利だ。これで9連戦はすべて勝ち越し、6勝3敗で終えた。巨人が負け、単独首位。油断はできないが悪くない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)