夏甲子園に全国最多タイ35度出場の北海が延長13回、駒大苫小牧を退けた。5回から救援した山本樹(たつき=3年)が、投げては9回無失点の力投、打っても延長13回に相手三塁手の手前で大きく弾む打球が左前適時打となり、決勝点をもぎ取った。

 鍛え上げた力に、運も持っていた男が、駒大苫小牧に引導を渡した。延長13回表2死三塁、北海・山本の打球は“三塁ゴロ”だった。だが、相手三塁手の手前でイレギュラーバウンド、高くはねて左前に抜けていった。

 2死から三塁打で出ていた大矢が、ガッツポーズでホームを駆け抜ける。息詰まる2-2の均衡を破る、3点目の適時打。一塁ベース上でほほ笑んだ山本は、その裏、気迫の投球で三振、三振、二ゴロで締めくくった。「勝てて良かった。(13回の打席は)『自分が決めてやる』と振りました。チラッと振り返ったら、打球が抜けていくのが見えて。運も大切ですよね」。3時間10分の死闘を終え、喜びをかみしめるように笑った。

 指揮官の勝負手だった。今春の決勝でも戦った相手。この日は序盤から駒大苫小牧に流れが傾いた。1、3回の得点機に確実に1点ずつ入れられ、逆に北海は2度の好機をつぶしていた。平川敦監督(44)は「3点目が入ると厳しい。山本にかけました」と、5回から背番号8をマウンドに送った。

 託された山本が、状況を一変させた。「(駒大苫小牧の)伊藤投手に負けられない」と、140キロ台の直球、チェンジアップを決め球に、散発2安打、9奪三振の投球で、流れを逆転させた。春は右肩炎症で、ベンチ入りしたが出番はなかった。迎えた、夏。地区で1試合(4回を自責2)、南大会1回戦の北海道栄戦では先発して5回0封し、信頼を勝ち取っていた。

 この日、4回で降板した先発の渡辺は「また、試合ができる。山本に助けられました」と感謝し「あいつは真面目でないところもあるけど、野球だけは絶対に手を抜かないから」と続けた。先発で、救援で、2試合連続キーマンとなった男は「次(小樽潮陵)も厳しい試合、勝てるように調整したい」と明日24日の準決勝へ、気持ちを切り替えていた。【中尾猛】