日大東北が福島商を下し、3年連続15度目の決勝進出を決めた。ここまで4戦すべて抑えの最速142キロ右腕斎藤未来(3年)が7回無死一、三塁から登板。1人走者をかえしたものの、3回1安打無失点と好投した。

 1点リードの9回表2死一、三塁のピンチ。斎藤は外野の方を向き、帽子のつばに書いてある「気持ち」の文字を見返した。思い出したのは、昨秋82歳で亡くなった野球大好きの祖父登志恵さんとかわした「甲子園に行く」の約束。再び打者に向かうと、自己最速タイの142キロの直球をマークし、最後は中飛で締めた。

 準決勝まで全5戦に抑えで登板し無失点。3年連続の決勝進出を引き寄せた“絶対クローザー”は、チーム一の苦労人でもある。今年2月に右肘の軟骨除去手術を受け、全力で投げられるようになったのはこの5月。「ケガで一番つらい思いをした。それが今につながっている」。投げられない時期は、指先の感覚を衰えさせないため、授業中でも隠れて硬球を触っていた。満を持して迎えた最後の夏。5戦計9回でわずか3四死球の制球力は、努力のたまものだ。

 決勝は聖光学院との3年連続同カードとなった。13年夏は、1点リードの9回裏に追いつかれ延長10回サヨナラ負け。昨夏は、4点リードの9回裏に追いつかれ延長11回サヨナラ負け。2年連続で悪夢のような負けを喫した。あれから「長いようで短かった」と斎藤。昨年のエース大和田啓亮(現日大)からは「勝てる投手になれ」と言葉を残された。リベンジの大一番がようやくやって来た。

 中村猛安監督(36)からは「お前が最後のマウンドに立ってると思うよ」と既に告げられている。「全部出すだけ。楽しんでいきたい」。最後もゼロで締め、12年ぶり8度目の甲子園を引き寄せる。【高場泉穂】

 ◆斎藤未来(さいとう・みらい)1998年(平10)1月13日、福島県会津若松市生まれ。鶴城小4年から「オール東山学童野球スポーツ少年団」で野球を始め、若松二中では「会津ボーイズ」に所属。日大東北では1年秋からベンチ入り。179センチ、70キロ。右投げ右打ち。家族は両親、姉。血液型O。