春夏通じて甲子園初出場の大阪偕星学園が比叡山(滋賀)との延長戦を制し、初陣星を挙げた。9回2死から追いつかれたが、延長10回2死から6連打で4点を奪取。大阪勢春夏350勝をやんちゃな軍団が勝ち取った。

 100年の夏の甲子園で、大阪の“やんちゃ軍団”が躍動した。比叡山に毎回の14安打されながら、粘って粘って延長戦で突き放した。「子どもたちが全力で向かって行く姿を見て、感無量でした」。山本晳(せき)監督(47)の目じりは下がりっぱなしだった。

 延長10回2死一、三塁から的場が右中間へ決勝打。大阪大会決勝でも適時打を放ち、甲子園初戦でも千金の2打点。「流れが来ているなと思ったので、ヒーローになろうと思っていました」と胸を張った。

 受験でつまずいたり、スポーツで志望校に進めなかったり…挫折した生徒を受け入れてきた。学園の太田明弘理事長(61)自ら「ラグビーの伏見工のような」と、落ちこぼれ軍団の奇跡を描いたテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」の野球版に例える。山本監督は11年の着任直後、遠方に練習試合に出た際はノンストップでバスを運転した。当初はサービスエリアで生徒を管理することすら難しいほど荒れていたからだ。中学時代は月に数回、親が学校に呼び出されていた選手もいる。投打でプロ注目の姫野は天理(奈良)を1年春に退学、同9月に大阪偕星学園へ編入したが、途中は工事現場で働いていた。いろんな経験を持つ選手を山本監督が束ねて鍛えあげてきた。

 「楽して得られるものなんて何もない。うちにはエリートはいない。だから練習するしかない」

 監督が信念を貫き通し、選手との信頼関係が芽生え、今のチームができあがった。この日の朝も8時半から打ち込んで甲子園入り。「いい打撃練習でした。この集中力があれば全国制覇も夢じゃない」と大きな夢まで口に出た。全国制覇を果たしたドラマ同様、大阪偕星学園の奇跡への挑戦が始まった。【堀まどか】

 ◆大阪勢350勝 大阪勢が甲子園春夏通算350勝目(春188勝、夏162勝)。都道府県別350勝到達は全国初。2位は兵庫県の296勝。