仙台育英(宮城)が花巻東(岩手)との東北対決を制し、1994年(平6)以来21年ぶりに8強入りした。先発し、3回1/3、2失点で右翼守備にまわった百目木(どめき)優貴(3年)が4打数4安打1打点と活躍。チームとしても計11安打をマーク。バントをしっかり絡めて得点する盤石な攻撃で逃げ切った。今日17日の準々決勝では、4強をかけ秋田商と対戦する。

 仙台育英の右腕百目木が本職のピッチングでなく、バッティングで輝いた。2-1とリードする2回表無死一、二塁で、左翼線を抜ける適時二塁打。その回から先発加藤に代わり、エース高橋を投入した花巻東に大きなダメージを与えた。その後も「思った以上にボールが見えた」と中前、右前、内野安打と打ち分け、4打数4安打。「(投げるより)バッティングの方が楽しいです」とお立ち台で笑いながら言い切った。

 13日の練習で柵越えするなど、もともと打撃がいい投手。センバツでは2戦とも代走で出場したほど足にも自信がある。優れた運動能力は、元ソフトボール投手の母マリリンさん(46)から受け継いだものだ。女手一つで育ててくれた分、甲子園で「恩返ししたい」と百目木。「テレビの前で見てくれたと思います」と、応援に来られなかった母を思った。

 先発し、3回1/3、5安打2失点と思うような投球は出来なかったが「(佐藤)世那をカバーできたのかな」。目標とする日本一へ、エース佐藤世の負担を減らしたことも大きかった。

 チームは、選手層の厚さを見せつけただけでなく新たな攻撃の姿勢も見せた。打力のある選手がそろうため、昨秋以来バントはほとんど使わなかった。だが、6月の高崎健康福祉大高崎(群馬)との練習試合で、連打が生まれず敗れたことをきっかけにバントを強化。打てない時でも得点する力を磨いてきた。

 この日も初回に先頭の佐藤将太(3年)が右前打で出ると、2番青木玲磨(3年)がすかさず送り先制点につなげた。6回1死一塁でも佐藤将が犠打をしっかり決める。得点にはつながらなかったが、9回表1死一塁でも4番郡司裕也(3年)が犠打(失策で出塁)を成功させた。4番に座り初めてバントのサインを受けた郡司は「驚きました。(佐々木)監督が本気なんだな、と。どうしても追加点を取りたいと思っているのが分かった」。春は敦賀気比に1-2で敗退。1点の重みを感じながら、1点差で勝ちきった。

 今日17日も、続けて同じ東北の秋田商とぶつかる。勝てばエース大越基(現早鞆監督)を擁し準優勝した89年以来26年ぶりの4強だ。「目の前の試合に向かっていくだけ」と百目木。1試合ずつ、すごみを増す仙台育英ナインに慢心はない。【高場泉穂】

 ◆百目木優貴(どめき・ゆうき) 1997年(平9)8月28日、仙台市生まれ。小3から野球を始める。茂庭台中では太白シニアで主に投手と中堅手。仙台育英では2年秋からベンチ入り。170センチ、64キロ。右投げ右打ち。母の百目木マリリン・デビリアさん(46)はフィリピンとスペインのハーフ。妹がいる。