第98回全国高校野球選手権大会(4日抽選、7日から15日間)の出場校による甲子園練習で2日、前代未聞のシーンがあった。大分のマネジャー首藤桃奈さん(3年)が練習を手伝い、開始から約15分後に大会関係者から制止された。練習補助員は男子に限るという大会規定はあるが、甲子園練習時もこれに準ずると明記がなかった。

 練習開始から約15分経過した頃だった。この日のために用意された真新しいユニホームを着た大分のマネジャー首藤さんが、大会関係者から注意を受けた。普段通りノッカーにボールを渡していた練習補助が、甲子園では大会の規定に触れるためだった。「やっぱりダメなんだと思いました」。すぐにグラウンドを出て、残りの時間はベンチから見守った。

 出場校へ配布された手引には、練習補助員とボールボーイは男子部員に限るとの記載があり、甲子園練習もこれに準じる。しかし、甲子園練習については、男子に限るという記載がなく、ユニホームを着ていない記録員は練習に参加できないとだけ明記されていた。大分は甲子園練習が大会規定に準ずるという認識がなかったという。日本高野連の井本亘事業課長(45)は、「申し訳ないが、危険防止のための規定なので」と説明した。

 松尾篤監督(43)は「3年間選手と一緒にやってきた。いつも苦労しながらマネジャーをやってきたから、ご褒美にグラウンドに立たせてあげたかった。すみませんでした」と頭を下げた。首藤さんは聖地に立った15分を「緊張してボールを渡す手が震えました」と振り返った。

 首藤さんは野球経験はなく、2歳半からクラシックバレエを続けている。「中3で全校応援を見て運命の扉が開きました」。中学の答辞で「私には夢があります。野球部のマネジャーになって甲子園に連れて行きます」と宣言し、夢をかなえた。2年前も甲子園に出場。アルプス席で声をからした。「気持ちは全然違います。今年は同級生が自分たちで勝ち取ったから特別な思いがあります」と言葉に力を込めた。【中島万季】

 ◆甲子園での女子のユニホーム姿 08年センバツの甲子園練習で、華陵(山口)の高松香奈子外野手(当時3年)が、女子部員として史上初めてユニホーム姿で登場。事前に女子は練習に参加できないと確認していたため、ベンチでタイムキーパー役などを務めた。試合ではベンチ入りせず、スタンドで応援した。なお、女子が記録員としてベンチ入りが認められたのは、96年夏の甲子園。同夏は9校の女子マネジャーがベンチ入りした。女性部長として初めてベンチ入りしたのは、95年夏の甲子園での柳川(福岡)の高木功美子さん(当時39歳)だった。