中越はきょう11日、1回戦の富山第一戦に挑む。本番を翌日に控えた10日は大阪・豊中市で最後の練習を行った。緊張感と高揚感の中で打撃、守備、連係を一通り確認した。4番打者の西山侑汰(3年)はフリー打撃で強い打球を連発。振りの速さもキープして、スタンバイ完了だ。プレーボールは甲子園球場の第2試合、時間は正午になる。

 西山のバットから、鋭い金属音が鳴った。芯で捉えられたボールは勢いよくはじかれる。ケージを3カ所設置して繰り広げた打撃練習だ。バント、フリー打撃、バスターと、目的を特化したケージをローテーションで消化していく。「調子はいい。ただ、緊張している」。適度の緊張感を、本番では闘志に変える。

 「チャンスに1本打って、チームを活気づけるのが4番打者」。そう規定する主砲に近づくため、西山は努力を惜しまなかった。早朝の自主トレには誰よりも先に姿を見せた。野球部寮生活だが、朝の点呼が6時15分(冬場は5時45分)に終わると、一番最初に学校の室内練習場に駆けつけた。寮から午前8時に届く朝食を取りながら、ホームルームが始まる8時半までティー打撃などバットを振った。

 夏の新潟大会が始まる前に、’15年夏の甲子園出場時の主将・斎藤颯さん(りゅう=富士大1年)から、岡田拓磨(3年)に電話がかかってきた。近くにいた西山は通話を代わってもらい、貴重な指示をもらった。「チームのためにできることを4番がやれ」。

 前主将の斎藤さんは夏の大会前に故障に見舞われ、ゲーム出場はできなかった。本来は4番打者だった先輩の分まで背負って、西山は甲子園で大暴れを誓う。「“チームのため”という颯さんの思いを引き継いで、やる」。大阪市内の宿舎でも30分のランニングと200本の素振りを日課にしている努力の主砲は、勝利をひたすら目指す。

 本田仁哉監督(40)は「打つべき人間が打つと、打った1本以上に盛り上がる」と、西山が放つ安打の付加価値を話した。新潟大会は6試合24打数11安打の4割5分8厘(打点8)。「チャンスに1本打ちたい」という4番の安打が、中越打線に火を付ける。【涌井幹雄】