残酷な結末だった。無安打投球を続けていた中越・今村が、2球に泣いた。「2球の失投で負けたのが、悔しい。課題だった失投が最後に出てしまった」。エースは涙を流し、言った。

 9回1死まで安打なし。120キロ台の直球にスライダー、シュートで攻めた。「コースをとにかく突こう」と5四球は想定内。2失策もあり、走者は出しても丁寧な投球で切り抜けた。しかし、110球目。甘く入ったスライダーを安打された。115球目、最後のボールも甘かった。「最初の二塁打で冷静さをなくしてしまった」と悔やんだ。

 帽子のツバには、ベンチ外の3年生に書いてもらった「お前に任せた」などのメッセージが記してある。昨夏の初戦で滝川二(兵庫)にサヨナラ負けした先輩たちの励ましも、大会前にもらっていた。「先輩たちの分まで、勝ちたかった」。思いは、紙一重でかなわなかった。

 ▼中越・今村は夏の大会では98年決勝の松坂(横浜)以来となるノーヒットノーランの可能性もあったが、9回1死からの初安打をきっかけにサヨナラ負け。9回に初安打を許した最近の例では14年センバツの溝田(履正社)がいる。溝田は小山台戦で9回1死から内野安打を許したが、1安打完封勝ち。勝てれば好投は報われる。夏の大会で9回以降に初安打を許して敗戦投手は、84年安部(境)以来32年ぶりとなった。

 安部は法政一戦で延長10回2死まで四球1個の準完全を続けながら、124球目を3番末野に左翼ラッキーゾーンへ運ばれ0-1でサヨナラ負けした。【織田健途】