盛岡大付(岩手)が、ボクシング元世界王者のパワーをもらった。第89回選抜高校野球で8強入りしたチームは前日26日、兵庫・神戸市内のサウナで3階級制覇を成し遂げた長谷川穂積氏(36)とばったり。多くの選手が握手をして感激に浸った。一方27日の西宮市内での練習では、周囲のサポートを忘れがちになった選手に関口清治監督(39)がカツを入れた。明日29日の履正社(大阪)との準々決勝へ、気を引き締めた。

 夕方の偶然の出会いだった。盛岡大付が神戸市の宿泊先から近いサウナの店舗入り口で、周囲から初の8強入りの歓迎を受けていた。その時、サウナを終えた長谷川氏が通りかかったのを、ボクシング好きの菜花友紀(3年)が気付いた。主将の比嘉賢伸(3年)らが「握手してください」と言うと元世界3階級王者は“神対応”。多くの選手と手を握り合い、貴重なコミュニケーションを取った。

 盛岡大付は夏の甲子園期間中も、疲労回復とリラックスを目的にして同じ店舗を利用している。長谷川氏は兵庫・西脇市生まれで、いわば神戸は地元。サウナに入りながら裸のつき合いこそなかったが、選手にはラッキーな出来事。比嘉主将は「いいムードを感じます」と声を弾ませた。

 もっとも一夜明けたこの日、その感激は吹き飛んだ。当然のように守備、打撃をこなす選手たちを、関口監督が練習後ベンチに集めて緊急ミーティング。準備運動、クールダウンの最中にベンチ外の選手が打撃ケージの設置や、グラウンド整備する。100球以上投じる打撃投手もいる。同監督は「感謝を忘れている。他の選手より、いい思いをさせてもらっているのに。それが当たり前になっていることに腹が立った」と意図を説明した。

 8強入りできたのは実力もあるが、周囲の大きなサポートがあったからこそ。やや浮かれ気味のナインに、関口監督は自覚と責任感を求めた。主砲の植田拓(3年)は「謙虚に。感謝の気持ちも」と自分を見つめ直した。2日間で味わったアメとムチ。心を入れ替えて、優勝候補・履正社撃破へのゴングを待つ。【久野朗】