2年ぶり16度目出場の静岡が8-11で大阪桐蔭に競り負けた。左腕エース池谷蒼大投手(3年)が1回表にいきなり6点を失うなど8回1/3を14安打11失点。中盤は直球を主体に相手の強力打線を封じたが、8回に再びつかまった。打線は0-6の劣勢から追いつき、一時はリードを奪うなど驚異の粘りを披露したものの、最後に打ち負けた。収穫と課題の見えたセンバツを味わった。

 いきなり大阪桐蔭打線の洗礼を浴びた。エース池谷が「自分の投球ができませんでした」と振り返る1回表、決めに行った変化球を痛打されて6失点。味方打線が追いついた2回以降は「思い切って直球で押して通用しました」とストレートを軸に凡打の山を築いたが、8-6と2点リードして迎えた8回表に、再逆転を許した。

 逆転を信じ、ベンチで気丈に声援を送った池谷は「8回は自分の体力不足。集中力がきれてしまった」と反省した。敗戦が決まるとベンチ裏でそっと目を潤ませた。この日は今年最多の138球を投じ、最速は140キロをマーク。手応えと同時に課題もみえた。

 池谷 レベルの高い相手にも直球は通用しましたが、後半まで続かなかった。体力や変化球の精度も上げ、レベルアップして甲子園に帰ってきたいです。

 池谷を後押しするように、打線は粘った。0-6と大量リードを許した1回裏も、ベンチでは「ここで折れたら終わりだぞ。ここからだぞ!」と誰からとなく声が飛び交った。無死満塁から反撃の口火を切る3点適時二塁打を放った成瀬和人外野手(2年)は「直球を狙って、うまく対応できました」と自己評価。藤田誠也内野手(3年)稲角塁内野手(3年)の連続適時打で追いすがり、最後は小柳廉主将(3年)が右前に適時打で追いついた。一時は2点リードまで広げる反撃も、最後に相手打線の底力に屈した。

 打ち負けたが、詰めかけた4万1000人の大観衆からも大きな拍手が送られた。「普通なら意気消沈してしまうところですが、それが今の上級生たちのカラー。うちらしいですね」と評した栗林俊輔監督(44)は「それでも勝ちきれないのは今の実力。成瀬はまだ若いし、今後に期待したいですし、池谷の球質も通用するのは分かりました」と強調した。目標の4強は逃したが、チームスローガン「和」のもと、最後まで粘りの姿勢はみせた。負けた悔しさを胸に秘め、夏へ動き出す。【鈴木正章】